今回は2023年4月1日施行予定の改正不動産登記法について解説してきたいと思います。

「不動産登記法の改正といえば相続登記が義務化されるという話では?」と思われる方もいるかと思います。

しかし、実は他にも改正があります。今回は2023年4月1日施行予定の改正不動産登記法をふまえて、休眠担保権について解説します。

「休眠担保権って何?」「昔の抵当権があるがどうやって消すの?」という方は本ブログを見て参考にしていただけると幸いです。

 

 

目次

1 休眠担保権とは?

1-1 休眠担保権とは?

1-2 休眠担保権は抹消すべき?

2 休眠担保権はどうやって抹消するの?(現行の法律の場合)

2-1  休眠担保権の抹消方法

2-2 除権決定による抹消

2-3 完済した証拠書類による抹消

2-4 供託による抹消

3 休眠担保権の抹消は改正でどう変わった?

4 まとめ

 

1 休眠担保権とは?

「そもそも休眠担保権って何?」と思う方も多いと思います。この節では休眠担保権の基本について説明します。

1-1 休眠担保権とは?

休眠担保権とは現在でも抹消されずに残っている明治・大正・昭和初期に設定された古い抵当権等をいいます。

 

休眠担保権は前述のように明治・大正・昭和初期に設定されたものですので抵当権者(債権者)が死亡・合併・解散などにより不明になっている、お金を借りていた本人も亡くなっているので当時の状況が聞けない等により困ってしまう場合が多いのです。

 

1-2 休眠担保権は抹消すべき?

休眠担保権を抹消しないことにより、過料を支払う必要があるというわけではありませんが、抹消の手続きをしない限り、休眠担保権はそのまま残り続けます。

 

「休眠担保権が残っている不動産は売却できるの?」という疑問を持つ方もおられると思います。これに関して法律は以下のように定めています。

 

民法第577条 買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。

 

簡単に言うと買主は担保を抹消するまで代金の支払いを拒否できるうえ、売主に「担保権を消す手続きを早くしろ」と言えると定めています。つまり、休眠担保権を抹消することなく売却することは難しいということです。

 

「休眠担保権が残っている不動産を担保に新たに金融機関からお金を借りることができるのか?」という疑問を持つ方もおられると思います。これについても、金融機関は1番での抵当権設定を希望する事が多いため休眠担保権が残っている不動産を担保に新たに金融機関からお金を借りるのは難しいと思われます。

 

また、休眠担保権を放置すると関係者が増加し、手続きが複雑化するため早めに抹消することをお勧めします。

 

2 休眠担保権はどうやって抹消するの?(現行の法律の場合)

ここまで読んでいただいた方は「休眠担保権の抹消はどうするの?」と思われたかもしれません。この節では休眠担保権の抹消方法について説明します。

 

2-1 休眠担保権の抹消方法

休眠担保権の抹消方法は複数存在します。休眠担保権の抹消方法について定めた法律は以下のとおりです。

 

不動産登記法第70条 登記権利者は、登記義務者の所在が知れないため登記義務者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成23年法律第51号)第99条に規定する公示催告の申立てをすることができる。

2 前項の場合において、非訟事件手続法第106条第1項に規定する除権決定があったときは、第60条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独で前項の登記の抹消を申請することができる。

3 第1項に規定する場合において、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第60条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。同項に規定する場合において、被担保債権の弁済期から20年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも、同様とする。

 

「何を言っているかわからない・・・」と思われる方が多いと思います。以下の表が簡単にまとめたものです。

 

①     除権決定による抹消

②     完済した証拠書類による抹消

③     供託による抹消

 

2-2 除権決定による抹消

裁判所に公示催告の申立を行い、除権決定を得ることで休眠担保権を抹消することができます。公示催告の申立には要件があります。要件は証明することが必要です。要件は以下のとおりです。

 

①     抹消対象の登記につき申立人が権利者であること

②     抹消対象の登記につき実態法上、不存在または消滅していること

③     抹消対象の登記につき登記義務者が行方不明であること

④     抹消登記申請であること

 

除権決定による休眠担保権の抹消はあまり利用されていません。理由としては上記の要件につき②の要件を満たすことが難しいからです。休眠担保権はその多くが抵当権者(債権者)死亡・合併・解散などにより不明になっている、お金を借りていた本人も亡くなっているので当時の状況が聞けない等であり、証明することが困難であるからです。

 

2-3 完済した証拠書類による抹消

休眠担保権を完済した証拠書類による抹消もあまり利用されていません。なぜなら、休眠担保権は前述のように明治・大正・昭和初期に設定されたもので完済した証拠書類がないことが多いからです。

 

2-4 供託による抹消

実務上、最も多い休眠担保権の抹消方法は供託による抹消です。その要件は以下のとおりです。

 

①     弁済期から20年を経過

②     債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭の供託

③     登記義務者の所在が知れないこと

④     先取特権、質権又は抵当権の登記の抹消であること

 

供託とは法務省の説明によると「供託とは,金銭,有価証券などを国家機関である供託所に提出して,その管理を委ね,最終的には供託所がその財産をある人に取得させることによって,一定の法律上の目的を達成しようとするために設けられている制度です。」とのことです。

3 休眠担保権は改正でどう変わった?

2023年4月1日施行予定の改正不動産登記法で以下の条文が追加されます。

 

不動産登記法第70条の2

解散した法人の担保権(先取特権等)に関する登記について清算人の所在が判明しないために抹消の申請をすることができない場合において、法人の解散後30年が経過し、かつ、被担保債権の弁済期から30年を経過したときは、供託等をしなくとも、登記権利者(土地所有者)が単独でその登記の抹消を申請することができる

 

法務省によると改正の背景として「被担保債権が弁済等により消滅しても担保権の登記が抹消されず、登記がされてから長い年月を経た担保権の登記が残存していることがあり、これがあると不動産の円滑な取引を阻害する要因となる・登記義務者である法人の「所在が知れない」と認められる場合が限定されている上、貨幣価値が大きく変動しない現代においては供託要件を満たすことが困難な例が生ずることが予想される」としています。

 

この条文は①法人の解散後30年が経過していること、②弁済期から30年を経過している場合に単独で休眠担保権が抹消できることを意味しています。前述の供託による抹消との違いは供託の有無となります。

 

4 まとめ

以上が、2023年4月1日施行予定の改正不動産登記法をふまえた休眠担保権編についてのお話でした。ここまでのお話をまとめたものが以下の表です。

 

休眠担保権とは? ・休眠担保権とは現在でも抹消されずに残っている明治・大正・昭和初期に設定された古い抵当権等をいいます。

 

休眠担保権が残っているとどうなる? ・売却が困難

・眠担保権が残っている不動産を担保に新たに金融機関からお金を借りることは困難

休眠担保権の抹消方法

 

①除権決定による抹消

②完済した証拠書類による抹消

③供託による抹消

 

・③が実務上、多い

改正でどう変わる? ・①法人の解散後30年が経過していること、②弁済期から30年を経過している場合に単独で休眠担保権が抹消できるようになった

 

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