不動産の売買・贈与の手続きを自分でするときのポイント
今回のお話は、生前対策として不動産の売買・贈与を検討されている方や隣人同士で不動産の売買・贈与を検討されている方に向けた内容となっております。このような方の中には「不動産の売買・贈与の手続きは自分でできるものなのか?」、「不動産の売買・贈与の手続きを自分でするときのポイントは?」等の疑問を持たれる方もおられると思います。今回のブログでは不動産の売買・贈与の手続きのポイントについて説明していきます。不動産の売買・贈与の手続きについて気になる方は本ブログを参考にしていただけると幸いです。
目次
1 不動産の贈与契約書・売買契約書
不動産の売買や贈与は当事者同士の合意で成立しますが、後のトラブルを避けるためには契約書の作成をおすすめします。ここでは、不動産の売買契約書・贈与契約書作成時の注意点を説明していきます。
・ 相場からかけ離れた売買価格のリスク
不動産の知識が不足していると、適正な売買価格の設定が難しいです。市場価格よりかなり安い価格を設定すると、みなし贈与として贈与税が課される可能性があるため、適正価格を確認し、適正価格の範囲で売買することが重要です。
・固定資産税など諸費用の精算
不動産の取引には売買代金のほかにも、固定資産税や都市計画税、マンションの場合は管理費や修繕積立金などの諸費用が関わります。これらを精算しないと後でトラブルの原因になります。
・物件漏れのリスク
私道やゴミ置き場の共有持分、マンションの集会所や事務所の共有持分など、記載漏れが生じやすいです。これらの細部まで漏れなく記載することが重要です。
・担保の見逃しリスク
不動産の登記記録を確認する際、不慣れだと古い担保や買戻特約がついているのを見逃す可能性があります。売買・贈与前にしっかりと登記事項証明書を確認することが必要です。
・代金決済と引渡し
売買契約の締結時に代金決済(売買代金の支払い)と物件の引渡しを同日に行うことが一般的ですが、契約内容次第で別の日に設定することも可能です。所有権の移転時期についての定めも確認し、代金支払い完了後に所有権移転登記の申請を行うよう注意しましょう。なお、代金の支払いと不動産の所有権移転登記は、リスクを避けるために、同時に行うようにしましょう。
2 登記の申請
相続登記についてはこれを義務化する法律が成立し、2024年4月1日に施行されましたが、贈与・売買登記にはこのような法律はなく法的義務ではありません。そのため、売買・贈与登記を申請しなくても売買・贈与が無効になるわけではありません。売買・贈与登記を申請するか否かは当事者の判断に任されています。しかし、売買・贈与登記をしないことによりトラブルになる可能性があります。ここでは、売買・贈与登記をしないことにより起こるトラブルや登記の手続について説明していきます。
2-1 登記しないと起こりうるトラブル
第三者への売却のリスク: 売買・贈与登記をしていないと、元の所有者が第三者に不動産を売却し、第三者の名義になってしまう可能性があります。
贈与者の死亡による相続問題: 売買・贈与登記をしていないと、売主・贈与者の死亡後に他の相続人が不動産の所有権を主張し、相続財産とされてしまう可能性があります。
このように売買・贈与登記を申請しておかないと、後々トラブルにつながる可能性があります。売買・贈与を受けた際には自分の権利を守るためにも早めに売買・贈与登記を申請することをおすすめします。
2-2 登記の申請に必要な書類
登記の申請に必要な書類
不動産の売買や贈与登記を申請する際には、以下の書類が必要です。
売主・贈与者に必要な書類
登記済権利証または登記識別情報通知: 所有権を証明するための書類。
印鑑証明書: 発行から3カ月以内のもの。
固定資産評価証明書: 売買・贈与登記をする年度のもの。
登記原因証明情報: 権利の変動の原因を示す書類。不動産売買契約書や贈与契約書がこれにあたる。また、登記の原因となった法律行為が発生したことやその内容を記載した書面を別途作成して提出することも可能。
買主・受贈者に必要な書類
住民票の写し: 現住所を証明するための書類
※登記済権利証と登記識別情報について
登記済権利証(権利証)とは
登記済権利証、通称「権利証」とは、不動産の所有権を取得する登記が完了した際に法務局から発行される書類です。この書類は所有者しか持っていないものであり、所有権の証明として非常に重要な役割を果たしてきました。
登記識別情報の導入
平成17年の法改正により、登記済権利証に代わって「登記識別情報」が導入されました。登記識別情報は12桁の符号で構成されており、この情報を知っていることが所有者であることの証明となります。これは、従来の紙の書類に代わる電子的な証明方法です。
※登記申請前に確認すべきこと
氏名・住所の変更登記の必要性
売買・贈与登記を申請する前に、売主・贈与者の現在の氏名や住所が登記簿上のものと異なる場合は、氏名・住所の変更登記を行う必要があります。これは、正確な登記情報を保つために不可欠です。
担保や買戻特約の抹消登記
不動産に設定されている担保や買戻特約がある場合、これらを見逃すと後々のトラブルの原因となります。売買や贈与の前に、必ずこれらの抹消登記を行うことが重要です。
3 不動産の売買・贈与の手続費用
・譲渡所得税
不動産売却時に発生する譲渡益に対して所得税や住民税が課税されます。所有期間や用途により税率が変わります。
・贈与税
贈与を受けた財産の価額が基礎控除額を超える場合、その超過分に贈与税が課されます。高額な税率となるため、制度を利用して税額を軽減する方法を検討することが重要です。
・不動産取得税
不動産を取得した際に都道府県が課税する地方税です。固定資産税評価額の一定割合で計算されますが、軽減措置もあります。
・登録免許税
登記申請の際に納める税金です。
4 まとめ
売買・贈与登記を自分で申請するときには、対象不動産の権利関係の確認や売買・贈与契約書の作成など法律的な知識が必要になります。また、登録免許税のほかにも譲渡所得税、贈与税、不動産取得税などの税金が生じますので、どのくらいの税金を納める必要があるかを検討することも大切です。
書類に不備があって贈与登記がやり直しになってしまったとか、売買・贈与したら思っていた以上に税金がかかってしまったということがないように、不動産の売買・贈与を検討する場合は司法書士や税理士などの専門家にサポートしてもらうことをおすすめします。