「不動産を売却する予定ですが、売買契約時の住所から引っ越ししている場合手続きが必要ですか?」という疑問を持たれる方もおられると思います。今回は不動産を所有している方の住所が変わった場合にする登記手続きについて説明していきます。住所変更の登記手続きについて知りたい方は本ブログを見て参考にしていただけると幸いです。

目次
1 不動産売買で登記する際に住所変更してる場合
1-1 住所変更していないとどうなる?
1-2 住所変更の登記申請方法
2 住所変更登記義務化
2-1 住所変更登記義務化
2-2 職権による住所変更登記
3 DV被害者の住所不記載申出
4 まとめ

 

1 不動産売買で登記する際に住所変更している場合

不動産を売却する場合に売買契約時の住所から引っ越ししている場合どのような手続きが必要か、また住所変更の手続きをしない場合のデメリットについて説明していきます。これから不動産の売買をされる方の参考にしていただけると幸いです。

 

1-1 住所変更していないとどうなる?

不動産の所有者である、登記名義人の氏名又は住所(会社の場合、商号又は本店)に変更が生じたときは、売買や贈与、ローン完済時の抵当権抹消などの登記を申請する前提として、登記名義人の氏名又は住所の変更の登記をすることが必要となります。

 

1-2 住所変更の登記申請方法

住所変更の登記には「登記原因証明情報」「登記申請書」「登録免許税(収入印紙)」が必要となります。

・登記原因証明情報
⇒ 住民票の写し(または戸籍の附票の写し)
(市区町村が発行した証明書の原本)(マイナンバー(個人番号)が記載されていないもの)

※この住民票の写しは、不動産の所有者の登記簿上の住所(住所移転前の住所)と現在の住所(今回、住所変更登記を申請する住所)、また、その住所移転の日が記載されているものが必要です。(コピーは不可)

※不動産の所有者の登記簿上の住所から現在の住所(今回、住所変更登記を申請する住所)までの間に、複数回、住所移転をしているような場合には、住民票の写しでは、その住所移転の経緯を証明することができないことがあります。その場合には、さらに前住所の住民票除票の写しを取得するか、戸籍の附票の写し(本籍地の市区町村で発行)などを取得し、登記簿上の住所から現在の住所(今回、住所変更登記を申請する住所)までの住所移転の経緯を証明する必要があります。

※登記申請書に住民票コードを記載した場合には、住民票の写しの提出を省略することができます(ただし、住民票の記載内容から住所移転の経緯を確認することができない場合を除きます。)。

※ここにいう住民票の写し(戸籍の附票の写し)は、コピーという意味ではなく、市役所等発行の書類そのもののことですのでご注意ください。住民票または戸籍の附票原本は市役所等に保管されているため、写しとは、役所で発行してもらった正式な写しという意味となります。

・登記申請書
申請書の雛形は下記のようになります。

登 記 申 請 書

登記の目的   〇番所有権登記名義人住所変更

原   因  令和  年 月  日住所移転

変更後の事項 住所 ○○〇〇

       

申 請 人    

                

                  連絡先の電話番号  -    -    

添付情報

   登記原因証明情報  

令和  年 月  日申請    法 務 局

登録免許税 金     円

不動産の表示

 不動産番号

 所   在

 地   番

 地   目

 地   積

 

申請書の書き方
「登記の目的」
「○番所有権登記名義人住所変更」と記載します。
※登記事項証明書の甲区(所有権に関する事項が記載されている欄)の「何番」の所有権登記名義人(所有者)の住所を変更するのかを記載します。
これまでに住所変更の登記がされている場合には、その登記は、「付記1号」といった形で登記がされていますが、その場合でも、「付記1号」といった記載はせずに、その元になる番号(例えば「2番」)のみを記載してください。

「原因」
住民票の写しまたは戸籍の附票の写しに記載されている住所移転の日を記載します。
※「届出の日」ではありません。また、実際には、複数回の住所移転をしているにもかかわらず、その各回の住所変更の登記をしていなかった場合には、最後に住所移転をした日を記載します。

「変更後の事項」
住民票の写しまたは戸籍の附票の写しに記載されている現在の住所を記載します。

「申請人」
所有権登記名義人(所有者)の現在の住所及び氏名を記載し、「印」の箇所に押印します(認印で可)。
※住民票コード(住民票の写し等に記載されています。)の記載は必須ではありませんが、住民票コードを記載すると、登記申請書と併せて提出する必要のある住民票の写しの提出を省略することができる場合があります(「登記原因証明情報」の説明をご参照ください。)

「連絡先の電話番号」
提出された登記申請書の内容に誤りがあった場合や、提出書類に不足等があった場合には、法務局(登記所)の担当者から連絡があるので、平日の日中に連絡を受けることができる電話番号(携帯電話の電話番号等)を記載します。

「添付情報」
「登記原因証明情報」と記載します。
※ 住所変更の登記における登記原因証明情報としては、住所の変更があったことを証する情報のことをいい、具体的には、住民票の写し等を登記申請書に添付して提出します。

「登記申請の年月日及び申請先の法務局」
① 登記の申請をする年月日を記載します。
② 登記の申請先の法務局(登記所)を記載します。
登記の申請は、その申請する不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に対してする必要があります。
管轄の法務局(登記所)については、法務局ホームページに掲載されています。
※ 法務局ホームページ「管轄のご案内」
(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html)

「登録免許税」
登録免許税額は、不動産(土地又は建物)1物件につき、1,000 円です(土地1物件と建物1物件の合計2物件ですと、2,000 円となります。)。
※ 登録免許税は収入印紙を購入して納付することができます。

「不動産の表示」
登記の申請をする不動産の表示を、登記事項証明書等に記載されているとおりに正確に記載します。
不動産番号を記載した場合には、土地について、土地の所在、地番、地目及び地積の記載を、建物について、建物の所在、家屋番号、種類、構造及び床面積の記載を、それぞれ省
略することができます。
※不動産番号は、一筆の土地又は一個の建物ごとに付された13桁の番号で、登記事項証明書等に記載されていますが、登記申請書の作成において不動産番号の記載は任意ですので、不動産番号が分からないといったような場合には、記載は不要です。

添付書面の原本の還付(返還)請求について
登記申請書に添付して法務局(登記所)に提出する書面(住民票の写し等)は、登記申請の際に、その原本の還付を請求することで、法務局での登記申請内容の調査が完了した後、その原本を返してもらうことができます。
原本の還付を請求する場合には、還付を請求する添付書面のコピーをとり、そのコピーに「原本に相違ありません」と記載の上、登記申請書に押印した申請人がそのコピーに署名(記名)押印(複数枚にわたるときは、ホチキスどめした各用紙のつづり目に契印)したものを登記申請書に添付して、原本と一緒に提出してください。
別途、原本の還付(返還)の請求書を作成・提出する必要はありません。
※その登記申請のためだけに作成したものなど、原本の還付を受けることができないものがあります。
詳しくは、法務局(登記所)にお問い合わせください。

・登録免許税
登録免許税額分の収入印紙を登記申請書と併せて提出(納付)します。
※ 現金を国(税務署等)に納付し、その領収証書を登記申請書と併せて提出する方法もあります。

収入印紙(又は領収証書)は、登記申請書に直接貼り付けるのではなく、別の白紙(台紙)に貼り付けてこれを登記申請書とともにつづり(ホチキスどめ)、登記申請書と白紙(台紙)との間に契印をします。収入印紙そのものには、押印をしないように注意してください。

登記申請書等の提出について
作成した登記申請書及び登記申請書に添付する書面(添付書面)を、その申請する不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)の窓口に持参する方法又は郵送する方法により、登記の申請をします。
郵送によって登記の申請をする場合は、登記申請書及び添付書面を入れた封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載の上、書留郵便により送付してください。
登記の申請先となる不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)については、法務局ホームページ「管轄のご案内」をご覧ください。

2 住所変更登記義務化

 

不動産登記法の改正により住所変更についてのルールが変更になります。不動産登記法の改正によりどのように変わるか説明していきます。

 

2-1 住所変更登記義務化

 

今までは、引っ越しなどで住所が変更しても、住所変更の登記申請は任意であり、変更しなくても大きな不利益がなく、また、転居のたびに所有する不動産それぞれについて登記申請するのは負担が大きいとのことから、住所変更の登記申請がされないまま放置されていることがよくありました。
しかし、都市部では、住所変更登記等ができていないことが、所有者不明の土地の主な原因となっているとの調査結果もあり、問題となっています。
そのため、住所変更登記の申請が義務化されることとなりました。(令和8年4月1日施行)

・住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請が義務となります。

・「正当な理由」がないのに申請を怠った場合には、5万円以下の過料が課されます。

※施行日(令和8年4月1日)より前に、住所等変更が発生していた場合についても、登記申請の義務があります。

※申請義務の履行期間については、施行前からスタートしないように配慮されます。
⇒具体的には、施行日とそれぞれの要件を満たした日のいずれか遅い日から、法定の期間(2年間)がスタートします。

(https://www.moj.go.jp/content/001401146.pdf)

 

2-2 職権による住所変更登記

 

住所変更等の申請手続きをスムーズにするため、登記官が他の公的機関(市役所等)から取得した情報に基づいて、職権で変更登記をする新たな制度も導入されます。

制度の運用方法は、下記のようになります。
①所有権の登記名義人が、あらかじめ、その氏名・住所の他、生年月日等の「検索用情報」を提供する
②検索用情報等を検索キーとして、法務局側で定期的に住基ネットに照会をして、所有権の登記名義人の氏名・住所等の異動情報を取得することにより、住所等の変更があるかを確認する
③住所等の変更があった時は、法務局側から所有権の登記名義人に対し、住所等の変更登記をすることについて確認を行い、その了解を得たときに、登記官が職権的に変更の登記をする
※住民基本台帳制度の趣旨を踏まえて、本人による「申出」があるときに限定されます。

不動産の所有者が会社の場合は、法務省内のシステム間連携により、法人の住所等に変更が生じたときは、商業・法人登記のシステムから不動産登記のシステムにその変更情報を通知することにより、住所等の変更があったことを把握して、登記官が職権的に変更の登記をします。

(https://www.moj.go.jp/content/001401146.pdf)

 

3 DV被害者の住所不記載申出

 

現在は、登記事項証明書等を取得することで、誰でも登記名義人等の氏名・住所を知ることが可能です。
そのため、第三者に住所を知られると生命・身体に危害が及ぶおそれのあるDV被害者等については、事情によって、前住所を住所として登記をすることも認めたり、住所の閲覧を特別に制限する取扱いなどがされています。

DV被害者等についても、住所変更登記等の申請義務の対象となることから、現在の取り扱を見直し、必要に応じて、DV被害者等の保護のための措置が法制化されます。(令和6年4月1日施行)

DV被害者等の対象者が法務局に申出をすることで、対象者が載っている登記事項証明書等を発行する際に現住所に代わる事項を記載することとなります。
具体的には、委任を受けた弁護士等の事務所や被害者支援団体等の住所が想定されています。

4 まとめ

以上が住所変更の登記手続きについてのお話でした。ここまでのお話をまとめたものが以下の表です。

不動産売買で登記する際に住所変更してる場合 ・不動産の所有者である、登記名義人の氏名又は住所に変更が生じたときは、売買などの登記を申請する前提として、登記名義人の氏名又は住所の変更の登記をすることが必要。

・住所変更の登記には「登記原因証明情報(住民票の写しまたは戸籍の附票の写し)」「登記申請書」「登録免許税(収入印紙)」が必要。

住所変更登記義務化 ・令和8年4月1日から住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請が義務となる。

・「正当な理由」がないのに申請を怠った場合には、5万円以下の過料が課される。

・登記官が他の公的機関(市役所等)から取得した情報に基づいて、職権で変更登記をする新たな制度も導入される。(所有者の申出が必要)

DV被害者の住所不記載申出 ・DV被害者等についても、住所変更登記等の申請義務の対象となることから、現在の取り扱を見直し、必要に応じて、DV被害者等の保護のための措置を法制化する。(令和6年4月1日施行)

・DV被害者等の対象者が法務局に申出ることで、対象者が載っている登記事項証明書等を発行する際に現住所に代わる事項を記載することができる。

 

・「司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、大阪(阿倍野区・阿倍野、天王寺)、東京(渋谷区・恵比寿、広尾)事務所にて「無料相談・出張相談」も受け付けております。どんな些細なご相談も親身になり耳を傾け、どのようなご依頼でもお客様のご希望、目的に近づけるよう励みます。お気軽にご相談、お問い合わせください。

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この記事の監修者

代表社員  柳本 良太(やなぎもと りょうた)

柳本 良太

「法律のトラブルで困っている人を助けることができる人間になりたい」という思いから18歳の時に一念発起し、2004年に宅地取引主任者試験に合格。続いて、2009年に貸金業務取扱主任者試験、司法書士試験に合格し、翌2010年に行政書士試験に合格。2010年に独立開業し、「やなぎ司法書士行政書士事務所(現:司法書士法人やなぎ総合法務事務所)」を設立し、代表社員・司法書士として「困っている人を助ける」ことに邁進する一方で、大手資格予備校講師として多くの合格者も輩出。

その後、行政書士法人やなぎKAJIグループ(現:行政書士法人やなぎグループ)を設立、桜ことのは日本語学院の開校などより広くの人のための展開を行いながら活躍中。

モットーは「顧客満足ファースト」と「すべてはお客様の喜びのために」。

 

<保有資格>

・宅地取引主任者(2004年取得)

・貸金業務取扱主任者(20009年取得)

・司法書士(2009年取得)

・行政書士(2010年取得)

<所属法人>

司法書士法人やなぎ総合法務事務所