今回は2023年4月1日施行予定の改正不動産登記法について解説してきたいと思います。

「不動産登記法の改正といえば相続登記が義務化されるという話では?」と思われる方もいるかと思います。

しかし、実は他にも改正があります。今回は2023年4月1日施行予定の改正不動産登記法をふまえて、買戻特約について解説します。

「買戻しって何?」「買戻し特約が付いているがどうやって消すの?」という方は本ブログを見て参考にしていただけると幸いです。

 

 

目次

1 買戻し特約とは?

1-1 買戻し特約とは?

1-2 買戻特約の登記は抹消すべき?

2 買戻し特約はどうやって抹消するの?(現行の法律の場合)

2-1 必要書類の入手

2-2 申請書の書き方

3 買戻し特約の抹消は改正でどう変わった?

4 まとめ

 

1 買戻し特約とは?

「そもそも買戻し特約って何?」と思う方も多いと思います。この節では買戻し特約の基本について説明します。

1-1 買戻し特約とは?

買戻し特約は法律によると以下のとおりになっています。

民法第579条

不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。第583条第1項において同じ。)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。(以下略)

 

「何を言っているのかわからない・・」と思う方が多いと思うので具体的に事例を交えて説明します。

 

事例

Aは土地甲を所有していましたが、Bに売却することにしました。3月7日、AとBは土地甲を1000万円で売却する旨の売買契約を締結しました。

 

買戻し特約は売買契約と同時にする必要があります。今回の事例でいうと3月7日の契約のときに買戻し特約をつける必要があります。

 

今回の事例で買戻しが可能な人物は売主であるAです。Aが甲を買戻すためには、売買代金(今回の事例では1000万円)と契約費用を、Bに支払う必要があります。なお、売買代金については契約で金額を決めることができます。

 

「買戻しはいつまでできるの?」と思われた方もいると思います。買戻しは期間を定めなかったときは、5年以内です。期間を定めたときは、最長で10年以内です。なお、期間の伸長はできません。

 

1-2 買戻特約の登記は抹消すべき?

買戻特約の登記を抹消しないことにより、過料を支払う必要があるというわけではありませんが、抹消の手続きをしない限り、買戻特約の登記はそのまま残り続けます。

 

買戻特約の登記が残っていると、住宅ローンの借換の際に金融機関から、売買の際に買主や不動産業者から買戻特約の登記の抹消を求められる場合があるので早めに買戻特約の登記は抹消手続をすることをお勧めします。

 

2 買戻し特約はどうやって抹消するの?(現行の法律の場合)

ここまで読んでいただいた方は「買戻特約の登記の抹消はどうするの?」と思われたかもしれません。この節では買戻特約の登記の抹消方法について説明します。

 

2-1 必要書類の入手

以下は必要書類の一覧です。

①     登記原因証明情報

②     登記識別情報または登記済証

③     印鑑証明書(前の節の事例の場合、Bさんのもの)

④     司法書士などに委任した場合は委任状

⑤     登録免許税(不動産1個について1000円)

 

買戻し特約の当事者として多いのが各地方の住宅供給公社と日本住宅公団(現UR都市機構)です。

 

各地方の住宅供給公社または日本住宅公団(現UR都市機構)の場合は必要書類等を提出することで買戻権を抹消してくれる場合と、上記①~③等を受け取って自分で登記を行う場合があります。詳しくは各地方の住宅供給公社または日本住宅公団(現UR都市機構)のホームページを確認してください。

 

なお、上記以外の場合は①の書類を作成する必要がある場合があります。

 

2-2 申請書の書き方

以下は申請書のサンプルです。

登 記 申 請 書

 

登記の目的   番付記 号買戻権抹消    (注1)

原   因  令和 年 月 日買戻期間満了 (注2)

権 利 者    ○○市○○町二丁目10番地  (注3)

柳  太  郎

義 務 者    ○○市○○町○○6番地    (注4)

総合住宅供給公社

添付情報

登記識別情報(又は登記済証)登記原因証明情報

代理権限証明情報 印鑑証明書

 

令和5年3月7日申請 ○○ 法務局(又は地方法務局)○○支局(又は出張所)(注5)

 

代理人   ○○市○○町二丁目22番地

法 務 次 郎  印

連絡先の電話番号00-0000-0000

 

登録免許税 金1,000円

その他事項 送付の方法により登記識別情報通知書及び登記完了証の交付を求めます。

送付先 代理人事務所

登記完了証の交付方法 送付の方法による交付を希望する

 

不動産の表示

不動産番号    123456789123

所   在  ○○市○○町一丁目

地   番    63番

地   目    宅地

地   積    133・25平方メートル

 

(注1) 登記簿謄本等をみて、買戻登記の順位番号の番号を記載します。

(注2) 買戻期間の満了日の翌日を記載します。

(注3) 不動産の所有者の氏名・住所を記載します。

(注4) 買戻しをする権利を有していた人の氏名・住所を記載します。

(注5) 不動産の所在場所を管轄する法務局に申請書を提出します。

 

3 買戻し特約の抹消は改正でどう変わった?

2023年4月1日施行予定の改正不動産登記法で以下の条文が追加されます。

 

不動産登記法第60条の2

買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から10年を経過したときは、第60条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

 

法務省によると改正の背景として「所有権以外の権利についても、例えば、登記された存続期間が満了している地上権等の権利や、買戻しの期間が経過している買戻しの特約など、既にその権利が実体的には消滅しているにもかかわらず、その登記が抹消されることなく放置され、権利者(登記義務者)が不明となったり、実体を失ってその抹消に手間やコストを要するケースが少なからず存在するとの指摘がある」としています。

 

簡単に言い換えると「法律上権利が消滅しているが手続を忘れて放置したことによって手続きが複雑になり、コストがかかる場合があります。」ということです。この問題を解決するために簡単な手続きとして新たに追加された条文が不動産登記法第60条の2です。

 

この条文は契約の日から10年が経過している買戻しの特約に関する登記は単独で抹消できることを意味しています。つまり、前述した申請書では買戻しをする権利を有していた人が登場していましたが、関与が不要となります。

 

「なぜ10年?」と思われる方もいると思います。理由は前述したとおり、買戻し特約の期間は最長で10年以内ですので、契約の日から10年経過すると、買戻し特約は法律上消えていることが明らかだからです。

 

4 まとめ

以上が、2023年4月1日施行予定の改正不動産登記法をふまえた買戻特約についてのお話でした。ここまでのお話をまとめたものが以下の表です。

 

買戻し特約とは? ・売買代金と契約費用を支払うことで不動産を買戻せる制度

・期間は最長10年以内

買戻特約の登記が残っているとどうなる? ・住宅ローンの借換の際に金融機関から、売買の際に買主や不動産業者から買戻特約の登記の抹消を求められる場合がある。
現行の法律で買戻し特約の抹消に必要な書類 ①登記原因証明情報

②登記識別情報または登記済証

③印鑑証明書

④司法書士などに委任した場合は委任状

改正でどう変わる? ・契約の日から10年が経過している買戻しの特約に関する登記は単独で抹消できるようになった

 

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