民法解説25 時効の占有期間と所有権以外の時効について
民法総則 (No.25)
時効 ➂
2.取得時効
( 2 ) 所有権の取得時効
(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
④ 占有期間
「一定の期間」継続する必要があります。
- 占有の開始の時に善意・無過失
10年(短期取得時効)
※占有の途中で悪意に変わっても良い。
b.) 占有の開始の時に悪意または有過失(善意)
20年です
※占有は継続している必要があります。
(例)占有者が任意に占有を中断したり、他人に占有が
奪われて中断したときには時効は完成しません。
⑤ 占有の開始 (占有の承継)
(占有の承継)
第百八十七条 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。
➀占有開始 ②承継(売買)
A(7年占有) A → B(5年占有) B(12年占有)
善意無過失 悪意 時効取得
Aが、甲所有の土地の占有を善意かつ無過失で開始し、7年間占有を継続した後、悪意の B に譲渡し、Bはその後5年間占有を継続した。
→Bは、Aの占有期間と善意無過失の両方を承継し、占有期間が12年となるので、当該土地の時効取得を主張できる。
前の占有者から占有を引き継いだ者は,自身の選択により、
自身(B)の占有のみを主張すること、又は前主の占有を合算し
て主張することができます。
※前主の占有をあわせて主張するときは、瑕疵(占有の開始時
に悪意であったこと)も承継しなければなりません。
なお、瑕疵のないことも承継が可能。
(例)前主が悪意なら自分も悪意となり、前主が善意・無過
失なら、自分も善意・無過失であると主張できる。
※占有者は、前主・及び連続する前々主の占有期間を合算し
て主張することもできる
➀占有開始 ②承継(売買)
A(7年占有) A → B(5年占有) B(12年占有)
悪意 善意無過失 時効取得不可
Aが、甲所有の土地の占有を悪意で開始し、7年間占有を継続し
た後に善意かつ無過失のBに譲渡した。
その後Bは5年間占有を継続した。
BはAの占有期間とともに悪意も承継するので、当該土地の時効
取得を主張できない。
※Bはさらに5年間占有を続ければ、自己の占有のみで時効取
得を主張できる。
( 3 ) 所有権以外の取得時効
(所有権以外の財産権の取得時効)
第百六十三条 所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、
かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、そ
の権利を取得する。
(例)Aが不動産(他人物)を賃借した場合、Aは、その不動産の真の所有者が他人物であることを過失なく知らずに10年間、占有を継続すると(賃料は貸主に支払っている)賃借権を時効で取得できる。
「不動産の継続的な使用収益」という事実が存在し、賃料支払いにより、占有が賃借の意思に基づいているからである。