今回は「空家等対策の推進に関する特別措置法」の改正について説明したいと思います。

令和5年3月3日に空家等対策の推進に関する特別措置法の一部改正が閣議決定されました。
この改正により対象者の方は固定資産税が大幅に増加する可能性があります。

「老人ホームへ転居して自宅が空き家になっている」
「実家を相続したものの空き家のまま放置している」

といった事情のある方の参考になれば幸いです。

 

  •  固定資産税とは?
    • 固定資産税って何?
    • 固定資産税は誰がどのくらい払うの?
    • 固定資産税の評価額の調べ方
  • 空家等対策の推進に関する特別措置法でどう変わる?
    • 「特定空き家」とは?
    • 「特定空き家」に指定されるとどうなるの?
  • 空き家をどうすればいいの?
  • まとめ

 

固定資産税とは?

最初に固定資産税の基本について説明します。

 

固定資産税って何?

 

毎年1月1日現在に固定資産(土地や建物)を所有している方に課される税金です。

 

土地:住宅用地、田、畑、山林など

家屋:戸建て住宅、分譲マンションなど

 

固定資産税は誰がどのくらい払うの?

 

固定資産税を支払うのは、毎年1月1日現在に「固定資産課税台帳」に登録されている「所有者」(土地や建物をお持ち)の方です。

居住していなくても支払わなければいけません。

 

固定資産税の計算方法は、

 

【税額】 = 課税標準額 × 税率(1.4%)

 

課税標準額とは、

固定資産の価格(評価額)のことです。


家屋が建っている宅地の場合、課税標準の特例措置が適用され以下のようになります。

 

●小規模住宅用地(200㎡以下の部分)課税標準額 = 評価額×1/6

●一般住宅用地(200㎡を超える部分)課税標準額 = 評価額×1/3

 

家屋があることで土地の固定資産税が更地の場合より最大1/6に軽減されます。

 

固定資産税の評価額の調べ方

 

毎年4月から6月頃に市役所から届く納税通知書で評価額を確認することができます。

以下は納税通知書の見本です(大阪市の場合)。

他にも、市役所で評価証明書や土地・家屋価格等縦覧帳簿(名寄帳)を取得することでも確認できます。以下は名寄帳の見本です(大阪市の場合)。

 

空き家等対策の推進に関する特別措置法でどう変わる?

 

近年、空き家の数は増加を続けており、今後、更に増加が見込まれているため、

周囲に悪影響を及ぼす特定空き家の除却等の更なる促進に加え、周囲に悪影響を及ぼす前の段階から空き家の有効活用や適切な管理を確保することで、空き家対策が総合的に強化されます。

 

具体的には以下の様に変わります。

 

所有者の責務強化 現行の適切な管理の努力義務に加え、国、自治体の施策に協力する努力義務が追加されます。
空き家等の活用拡大 市区町村長は、空き家の所有者等に対し指針に合った活用を要請することができるようになります。

市区町村長は、空き家の管理や活用に取り組むNPO法人、社団法人等を空き家等管理活用支援法人として指定することができるようになります。

空き家等の管理の確保 市区町村長は、放置すれば特定空き家等になるおそれがある空き家等を管理不全空き家等として、

指導、勧告し、勧告を受けた管理不全空き家等の敷地は固定資産税の住宅用地特例を解除することができるようになります。

特定空き家等の除却等 市区町村長に特定空き家等の所有者等に対する報告徴収権を与え、特定空き家等に対する命令等の事前手続きを経るいとまがないときには、緊急代執行が行えるようになります。

これにより所有者不明時の略式代執行、緊急代執行の費用徴収が円滑化されます。

さらに市区町村長に財産管理人の選任請求権が与えられます。

 

 「特定空き家」とは?

 

次のいずれかに当てはまる空き家が特定空き家とされます。

 

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

 具体的には、

  ・部材の破損や地盤が均等に沈下せず傾斜している状態などが原因で、建築物に著しい傾きが見られる。

  ・基礎に大きな亀裂、多数のひび割れ、変形又は破損が発生している。

  ・腐食又は蟻害によって土台に大きな断面欠損が発生している。

  ・基礎と土台に大きなずれが発生している。

  ・柱、はり等に大きな亀裂、多数のひび割れ、変形又は破損が発生している。

  ・腐食又は蟻害によって主要な柱等に大きな断面欠損が発生している。

 

  • そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態

  ・排水等の流出による臭気の発生がある。

  ・浄化槽等の放置、破損等による汚物の流出、臭気の発生がある。

  ・ごみ等の放置、不法投棄による臭気の発生がある。

  ・ごみ等の放置、不法投棄により、多数のねずみ、はえ、蚊等が発生している。

 

  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

  ・屋根、外壁等が、汚物や落書き等で外見上大きく傷んだり汚れたまま放置されている。

  ・多数の窓ガラスが割れたまま放置されている。

  ・敷地内にごみ等が散乱、山積したまま放置されている。

  ・立木等が建築物の全面を覆う程度まで繁茂している。

  ・看板が原型を留めず本来の用をなさない程度まで、破損、汚損したまま放置されている。

 

  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

  ・立木の腐朽、倒壊、枝折れ等が生じ、近隣の道路や家屋の敷地等に枝等が大量に散らばっている。

  ・立木の枝等が近隣の道路等にはみ出し、歩行者等の通行を妨げている。

  ・空き家等に住みついた動物等が原因で、動物の鳴き声その他の音が頻繁に発生したり、動物のふん尿

   その他の汚物の放置により臭気が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている。

  ・住みついた動物が周辺の土地・家屋に侵入し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある。

  ・門扉が施錠されていない、窓ガラスが割れている等不特定の者が容易に侵入できる状態で放置されている。

 

要は管理ができていなくそのまま放置しておくと周辺に被害がでる可能性がある空き家です。

 

「特定空き家」に指定されるとどうなるの?

 

「特定空き家」の指定は次のような流れで行われます。

 

空き家の立ち入り調査→特定空き家に指定→助言・指導→勧告→命令→行政代執行

 

調査の結果「特定空き家」に指定されると、自治体から「助言・指導」が行われ、改善されない場合「勧告」がなされます。勧告を受けると、固定資産税の宅地の特例措置から除外され、その結果翌年以降の固定資産税はおおよそ更地状態と同等の最大6倍となる場合があります。

 

さらに自治体からの「命令」に応じずに違反となった場合、最大50万円以下の過料が科せられてしまいます。

 

空き家をどうすればいいの?

 

空き家管理の手間、固定資産税など管理コストが発生することを考えますと、次のように不動産を活用することをお勧めします。

 

  • 売却する

空き家の売却の場合、「空き家の譲渡所得の3000万円控除」の特例適用を受けることによって、所得税や住民税の納税額を大幅に抑えて売却することができます。

※この適用を受けるには、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること等様々な条件がありますためご注意下さい。

 

また空き家を相続した際に相続税を納めている場合、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに売却すると、譲渡所得の計算上、売却した空き家に対応する相続税額を取得費に加算することができます。(相続税の取得費加算の特例)

 

ただし、「空き家の譲渡所得の3000万円控除の特例」と「相続税の取得費加算の特例」はいずれかの1つの利用となります。納税額が低くなる方の特例を利用しましょう。

 

  • 解体する

空き家が所在する地域によっては、解体費用の補助制度を設けている自治体も存在します。首都圏では住宅の解体費用は100~200万円程度かかる場合が多いですが、最大でその半額を補助する制度もあります。空き家の解体を検討する際は、利用できる制度が無いか、空き家の所在する役所で事前に確認してみてください。

 

空き家管理の手間から開放される、「古家付き土地」より高く早く売却できるメリットがありますが、解体によって更地とする場合には、住宅用地から外れることで固定資産税が増加することとなりますのでご注意ください。

 

  • 賃貸として貸し出す

空き家の状況次第では、リフォームすることで賃貸物件として再生させ、家を手放さずに、空き家管理の手間から開放されることができます。

 

安定した賃貸収入を得ることができれば、リフォームや解体費用、毎年の固定資産税の負担と相殺することができるでしょう。

 

ただし、借主が居住後、インフラなどの管理責任が問われる等リスクがあることに注意が必要です。

 

  • 駐車場や農園として貸し出す

立地状況や土地の大きさにより方法は変わりますが、初期投資が少なく、手軽に開始できて比較的安定した収入を得られます。

 

駅前や幼稚園・保育園、小学校の周辺、幹線道路沿いなどの地域であれば、コインパーキングとすることも可能でしょう。コインパーキングは駐車場化の費用を全てコインパーキング運営会社が負担します。

 

また、一般的な月極駐車場よりも高く貸せる可能性があり、初期投資なく高収益が見込めます。

 

まとめ

 

今後は空き家のまま放置することで、固定資産税が増加したり、所有者等として責任を問われることとなりますので、専門家へ相談されることをお勧めします。

ここまでのお話をまとめたものが以下の表です。

 

固定資産税とは? ・毎年1月1日現在に固定資産(土地や建物)を所有している方に課される税金

・固定資産税の計算方法は、

【税額】 = 課税標準額 × 税率(1.4%)

家屋が建っている宅地の場合、課税標準の特例措置が適用されます。

・固定資産税の評価額は納税通知書、評価証明書や土地・家屋価格等縦覧帳簿(名寄帳)でできる

空き家等対策の推進に関する特別措置法でどう変わる? ・空き家等対策の推進に関する特別措置法の変更点

所有者の責務強化

空き家等の活用拡大

空き家等の管理の確保

特定空き家等の除却等

・「特定空き家」とは次のいずれかに当てはまる空き家

そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態

適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

・「特定空き家」に指定されるとどうなるの?

勧告を受けると、固定資産税の宅地の特例措置から除外され、翌年以降の固定資産税はおおよそ更地状態と同等の最大6倍となる場合がある

自治体からの「命令」に応じずに違反となった場合、最大50万円以下の過料が科せられる

空き家をどうすればいいの? 売却する

解体する

賃貸として貸し出す

駐車場や農園として貸し出す

 

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著者情報

代表 柳本 良太

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    <資格>

  • 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
  • 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
  • 2009年 司法書士試験合格
  • 2010年 行政書士試験合格
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