法人化をしたいけれども、出資をして作ることが難しいなど株式会社以外に選択肢はないかと考えていらっしゃる方、事業内容が幅広く利益が出るものもあるのでどのような法人を作ればよいか悩まれている方もいらっしゃるかと思います。
そのような方に、今回は「一般社団法人」について、特徴や設立の流れを説明していきますので、ご参考になれば幸いです。

1 一般社団法人の特徴
1-1 一般社団法人のメリット、デメリット
1-2 一般社団法人の特徴
2 一般社団法人に適した事業
3 一般社団法人の設立手続き
3-1 定款の作成
3-2 公証人による定款の認証
3-3 設立時理事の選任、設立時代表理事の選定、設立手続きの調査
3-4 設立登記の申請
3-5 一般社団法人設立上の注意点
4 まとめ

 

1 一般社団法人の特徴

1-1 一般社団法人のメリット、デメリット

●メリット
①出資が不要です。
②公的イメージがあります。
③一般社団法人が行う事業には、特定非営利活動法人のような制限がありません。
※特定非営利活動法人は、20種類の分野に該当する活動であり、不特定かつ多数のものの利益に寄与することを目的とするなど制限があります。
(詳しくはこちらhttps://www.npo-homepage.go.jp/about/npo-kisochishiki/nposeido-gaiyou)
④設立後、行政庁の公益認定をうけて公益財団法人になることができます。
⑤非営利型法人に該当する場合には、税制上の優遇措置があります。
※非営利型法人は、非営利型の一般社団法人は、収益事業を行った場合にのみ課税され、寄付金などに対しては課税されません。
(詳しくはこちらhttps://www.cao.go.jp/others/koeki_npo/koeki_npo_zeisei.html)

●デメリット
①剰余金の分配をすることができません。
②法人設立時の一般社団法人の定款については、公証人の認証が必要となります。(認証には費用がかかります。)
③設立時社員が2名以上必要となります。なお、設立後は1人でも解散事由には該当しません。

1-2 一般社団法人の特徴

 

●一般社団法人の設立には、官庁の許認可は不要です。
●一般社団法人には、監督官庁がありません。
設立後も行政から監督、指導を受けることはありません。
●一般社団法人が行う事業には、特定非営利活動法人のような制限がありません。
公益事業、共益事業、収益事業でも良く、法律に反しない限りあらゆる事業を営むことができます。
●最小限必要な機関は、社員総会と理事1人ですが、1人理事も代表理事として登記されます。
なお、定款に定めれば、①理事会(この場合は理事が3人以上、監事が1人以上必要です。)、②監事、③会計監査人を置くことができます。(一般法人法60条2項)
●一般社団法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立します。(一般法人法22条)

2 一般社団法人に適した事業

一般社団法人は、ボランティアからビジネスまで法律に反しない限りあらゆる事業を営むことができますが、特に次のような事業が一般社団法人に適している事業といえるでしょう。

①生きがい、やりがい兼収益指向型事業
現在は、平均寿命も延びて、定年が70歳でも年金だけでは生活が難しいです。そのため、定年退職者がささやかな生きがい(社会貢献)とささやかな収入を求めて起業する際には、一般社団法人が最も適しているでしょう。

②健康の増進、生活の向上、食文化の向上等公益目的を付加した事業
収益を目的とする事業の中でも、健康の増進、国民生活の向上、食文化の向上等を目的とする事業は、一般社団法人の方が会社よりも適しているといえます。

③その法人の会員等に対して情報・研究の成果を提供する事業
法律に反しない範囲において、自己の有する知識、経験、情報、研究の成果等を提供する事業。研究の成果等を提供する相手は、法人法上の社員に限定しても、しなくてもかまいません。

④その法人の会員等に対して農産物・物産等を提供する事業
無農薬野菜、物産等を産地直送で提供する事業も一般社団法人の事業に適しているでしょう。

⑤同好会、趣味の会等サークル活動として行う事業
例をあげると、○○の歴史研究会、○○俳句研究会、源氏物語研究会等のサークル活動として行う展示会、書籍の発行などの事業も、一般社団法人の事業に適しているといえるでしょう。

⑥地域振興として行う事業
村おこし、町おこし等地域の振興を目的とする事業も一般社団法人の事業に適しているといえるでしょう。

⑦共益目的事業
社員に共通する利益(共益)を目的とする事業で、同業者団体の行う事業。

3 一般社団法人の設立手続き

一般社団法人の設立手続きは、以下のような流れとなります。

3-1 定款の作成

2名以上の設立時社員が共同して定款を作成し、その全員が署名又は記名押印をします。定款は、紙以外にもデータ(電磁的記録)で作成することもできます。(一般法人法10条)
定款に記載又は記録しなければならない事項は以下のとおりです。
ちなみに、社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは、有効となりません。(一般法人法11条、12条)
①目的
②名称
③主たる事務所の所在地
④設立時社員の氏名又は名称及び住所
⑤社員の資格を得ること・失うことに関する規定
⑥公告方法
⑦事業年度
⑧一般法人法の規定により定款の定めがなければ効力を生じない事項(相対的記載事項)及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないもの(任意的記載事項)

3-2 公証人による定款の認証

主たる事務所を管轄する都道府県内にある公証役場にて、定款の認証をします。
手数料は、5万円+付随する手数料数千円です。
(詳しくはこちらhttps://www.koshonin.gr.jp/notary/ow09_4/9_4_q82)

3-3 設立時理事の選任、設立時代表理事の選定、設立手続きの調査

定款で設立時理事を定めなかったときは、設立時社員は、公証人の認証後すみやかに、設立時理事を選任します。
理事会設置一般社団法人である場合は、設立時理事は、3人以上でなければなりません。(一般法人法15条1項、16条1項)。
監事設置一般社団法人又は会計監査人設置一般社団法人である場合に、定款で監事又は会計監査人を定めなかったときも、設立時社員は、定款認証後すみやかに、これらの者を選任しなければなりません。(一般法人法15条2項)。

理事会設置一般社団法人である場合には、設立時理事の中から一般社団法人の設立に際して代表理事を選定しなければなりません。
理事が1人の一般社団法人の場合は、選定は必要なく、その者が代表理事となります。

設立時理事は、その選任後すみやかに、一般社団法人の設立の手続きが法令又は定款に違反していないことを調査しなければなりません。(監事設置一般社団法人の場合は、設立時理事及び設立時監事が調査をします。)(一般法人法20条1項)
調査により、違反がある又は不当な事項があると認めるときは、設立時社員にその旨を通知しなければなりません。(一般法人法20条2項)

3-4 設立登記の申請

一般社団法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立します。(一般法人法22条)
登録免許税として、6万円がかかります。

3-5 一般社団法人設立上の注意点

一般社団法人として設立後、公益認定の申請をする場合(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「公益認定法」という。)4条)には、そのデメリットもよく検討することが必要です。
公益認定の基準及び欠格事由については、公益認定法5条及び6条に規定されています。
例をあげると、毎事業年度開始日の前日までに行政庁に事業計画等の書類提出が必要となることや、社員の資格や理事の構成人数についての規制があります。
(詳しくはこちらhttps://www.koeki-info.go.jp/regulation/index.html)

4 まとめ

以上のように、一般社団法人は、会社と比べて設立費用が抑えられることや、他の法人より目的とする事業の自由度が高いことが特徴といえます。
(参考書籍 「登記研究 第905号 令和5年7月号」株式会社テイハン)

今回のお話を下の表にまとめています。

一般社団法人の特徴 ・出資が不要、税制上の優遇措置があるなどのメリットがあり、剰余金の分配をすることができない、設立時社員が2名以上必要などのデメリットがあります。

・官庁の許認可は不要、特定非営利活動法人のような制限がない、設立の登記をすることによって成立するなどの特徴があります。

一般社団法人に適した事業 ・ボランティアからビジネスまで法律に反しない限りあらゆる事業を営むことができます。
一般社団法人の設立手続き ・定款の作成、公証人による定款の認証、設立時理事の選任、設立時代表理事の選定、設立手続きの調査、設立登記の申請が必要となります。

 

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この記事の監修者

代表社員  柳本 良太(やなぎもと りょうた)

柳本 良太

「法律のトラブルで困っている人を助けることができる人間になりたい」という思いから18歳の時に一念発起し、2004年に宅地取引主任者試験に合格。続いて、2009年に貸金業務取扱主任者試験、司法書士試験に合格し、翌2010年に行政書士試験に合格。2010年に独立開業し、「やなぎ司法書士行政書士事務所(現:司法書士法人やなぎ総合法務事務所)」を設立し、代表社員・司法書士として「困っている人を助ける」ことに邁進する一方で、大手資格予備校講師として多くの合格者も輩出。

その後、行政書士法人やなぎKAJIグループ(現:行政書士法人やなぎグループ)を設立、桜ことのは日本語学院の開校などより広くの人のための展開を行いながら活躍中。

モットーは「顧客満足ファースト」と「すべてはお客様の喜びのために」。

 

<保有資格>

・宅地取引主任者(2004年取得)

・貸金業務取扱主任者(20009年取得)

・司法書士(2009年取得)

・行政書士(2010年取得)

<所属法人>

司法書士法人やなぎ総合法務事務所 代表社員

行政書士法人やなぎグループ 代表社員

やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役

桜ことのは日本語学院 代表理事

LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師

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