一般的に、銀行は、住宅ローンなどの融資を行う場合、土地や建物に抵当権を設定し、不動産に対して登記を行います。

この抵当権の登記は、住宅ローンの返済が終わっても、自動的には抹消されず、法務局に抵当権の抹消登記を申請しないと、不動産に抵当権の登記が残ったままとなってしまいます。

住宅ローンを完済したのに、不動産に設定された抵当権をそのまま放置するのはおすすめできません。

その理由を含めて、今回は抵当権の抹消についてお話させていただきますので、住宅ローンの返済が終わられた方のご参考になれば幸いです。

 

目次

1 抵当権をそのままにしておくとどうなるの?

2 抵当権抹消の手続きの流れ

3 抵当権抹消の登記申請書

3-1 「登記申請書」「添付情報」「登録免許税」

3-2 登記申請書作成の注意点

3-3 登記申請書の記入

4 まとめ

 

抵当権をそのままにしておくとどうなるの?

 

まず、抵当権が設定された不動産は、新たにその不動産を担保にして融資を受けることが難しくなるなどの不利益が生じる可能性があります。

新たに融資を受ける予定がある方は速やかに対応しておく方がよいでしょう。

抵当権の設定をされた後に、引っ越しで住所が変わった場合、抵当権抹消の登記の前に住所変更の登記が必要となります。

長期間放置してしまうと、住所証明書類を集めるのに手間がかかることもあります。

また、取引銀行から送付される書類の中には、紛失・汚損してしまっても、再発行されないものがあります。

その場合、「抵当権の抹消登記」を申請するためには、特別な手続きが必要となることもあります。

このため、住宅ローンを完済したら、できるだけ速やかに「抵当権の抹消登記」を申請しておくべきでしょう。

抵当権抹消の手続きの流れ

 

まずは、抵当権抹消の手続きに必要となる書類を取引銀行から取り寄せましょう。

そして、抵当権抹消の登記手続をするためには、「登記申請書」を作成し、取引銀行から送付された書類(例:委任状、解除証書等)と合わせて、不動産の所在地を管轄する法務局に提出する必要があります。

ご自身で作成して行うこともできますし、司法書士に委任して行うこともできます。

司法書士に依頼する場合、費用は、銀行ではなくご自身の負担となります。

法務局では、登記申請書の作成代行はしてくれません。

登記申請にあたっては、あらかじめご自身で登記申請書を作成する必要があります。

「登記申請書」は、法務局のウェブサイトから書式を入手(ダウンロード)して、作成することができます。

法務局の窓口では、「登記申請書」の用紙は備え付けられていませんので、ご注意ください。

また、登記申請にあたっては、取引銀行から送付された書類(例:委任状、解除証書等)に、作成日付や不動産の表示の記載がされているか確認をしておきましょう。

銀行によっては、ご自身で記入するよう空欄としている場合もありますので、その場合は、あらかじめ、必ずご自身で記入してください。

記載漏れがあると、登記申請の不備となりますので、ご注意ください。

「登記申請書」の作成方法や提出方法などについては、以下の法務局ウェブサイトで案内されていますので、ご参照ください。

このほか、法務局では、窓口での対面やオンラインによる面談、電話といった方法で、手続案内を実施しています。

手続案内を利用する場合には、事前予約が必要となります。

また、案内の方法が各法務局によって異なりますので、詳しくは、管轄の法務局のウェブサイトをご確認ください。

そのほか、取引銀行から送付された書類についてご不明な点は、取引銀行にお問い合わせください。

 

法務局ウェブサイト

住宅ローンを完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/info-net_00001.html

抵当権抹消の登記申請書

「登記申請書」「添付情報」「登録免許税」

 

抵当権抹消の登記申請には、「登記申請書」「添付情報」「登録免許税(収入印紙)」が必要となります。

一戸建てのお家の場合を例に説明していきます。

まず、「登記申請書」の記載例は下記のようになります。

 

次に、登記申請書と合わせて提出する書類の、「添付情報」について説明します。

① 登記識別情報(又は登記済証(抵当権設定契約書に「登記済」の四角の押印がされたもの)) 

こちらは、取引銀行から送られてくる書類です。

 

② 登記原因証明情報

 「解除証書」や「弁済証書」といったタイトルの書類で、取引銀行から送付されます。

※日付や不動産の表示等の記載漏れがないか確認をしましょう。

記載漏れがある場合には、あらかじめ取引銀行に問い合わせましょう。

 

③ 会社法人等番号

抵当権者である金融機関等の会社法人等番号です。

取引銀行から送付される文書に記載されていることが多く、それで確認することができます。

不明な場合は、取引銀行に確認をしましょう。

 

④ 代理権限証明情報(委任状)

取引銀行から送付されます 

※日付等の記載漏れがないか確認をしましょう。

記載 漏れがある場合には、あらかじめ取引銀行に問い合わせましょう。

 

最後に、「登録免許税(収入印紙)」についてです。

登録免許税額は、不動産(土地又は建物)1物件につき、 1,000 円です。

例えば、土地1物件と建物1物件の合計2物件ですと、 2,000 円となります。

郵便局や、法務局の印紙売り場で購入することができます。

 

登記申請書作成の注意点

 

① 登記申請書は、A4の用紙(縦置き・横書き。紙質は長期間 保存することができる丈夫なもの(上質紙等))を使用します。(用紙の裏面は使用せず、印刷する際は片面印刷で印刷してください。)

登記申請書と併せて提出する必要のある書類(添付情報)とともに、左とじにして提出してください。

登記申請書とその次に添付する収入印紙貼付台紙は、重ね合わせて、左側の余白のところで2か所ホチキスどめしてください。

また、添付書類(添付情報)は、ホチキスどめした「登記申請書+収入印紙貼付台紙」の後に、クリップどめするなどしてください。

 

② 文字は、直接パソコン(又はワープロ)を使用して入力するか、黒色インク、黒色ボールペン等(インクが消せるものは不可)で、はっきりと記載してください。

鉛筆は使用することができません。

 

③ 登記申請書が複数枚にわたる場合は、申請人又はその代理人の方(申請人が二人以上いる場合は、そのうちの一人で可能)が、ホチキスどめした各用紙のつづり目に契印をしてく ださい。

登記申請書の記入

 

上記の赤文字の部分について、取引銀行からの書類を確認しながら記入していきます。

 

①登記の目的

「抵当権抹消(順位番号後記のとおり)」と記載します

 

②原因

抵当権が消滅した日とその原因を記載します。

例えば、令和5年11月1日に抵当権の設定契約が解除されて抵当権が消滅したときは、「令和5年11月1日解除」と記載します。

取引銀行から受け取った「解除証書」、「弁済証書」等の内容を確認しながら記載してください。

 

③権利者(抵当権設定者=不動産の所有者)

権利者(抵当権設定者=不動産の所有者で、ご夫婦で所有されているなど、複数人の場合は、その全員)の住所及び氏名を記載します。

これは不動産登記簿上の現在の所有者の住所及び氏名と一致している必要があります。

一致していない(引っ越し等で住所の変更があったにもかかわらず、その変更登記がされていない)場合は、抵当権の登記の抹消を申請する前に、不動産登記簿上の所有者の住所及び氏名を現在の住所及び氏名に変更する登記が、別に必要となります。

 

義務者(抵当権者=金融機関等)

抵当権者である金融機関等の住所、名称、会社法人等番号及び代表者の氏名を記載します。

※この金融機関等の住所及び名称について、金融機関等から受け取られた「解除証書」や「弁済証書」、委任状に記載されている住所及び名称が、不動産登記簿上の住所及び名称と一致していない場合には、別途、その変更の経緯が分かる書類(当該金融機関等の商業登記簿謄本等)が必要となることがあります。

 

⑤添付情報

「登記識別情報」又は「登記済証」と記載します。

※抵当権者(金融機関等)から受け取ったものが、登記識別情報であれば「登記識別情報」と記載し、抵当権設定契約書に「登記済」の押印がされたものであれば「登記済証」と記載します。

 

「登記原因証明情報」と記載します。 

※ 登記原因証明情報とは、登記の原因となった事実又は行為及びこれに基づき現に権利変動が生じたことを証する情報のことで、抵当権の登記の抹消申請の場合には、 抵当権者(金融機関等)が作成した解除証書、弁済証書 等がこれに当たります。

 

「会社法人等番号」と記載します。

 

「代理権限証明情報」と記載します。

※ 登記申請に関する委任状です。

金融機関等が抵当権者 (義務者)となっている場合において、当該金融機関等が不動産の所有者(権利者)に登記申請を委任するときには、そのための委任状が必要となります。

 

⑥登記識別情報(又は登記済証)を提供することができない理由

登記識別情報又は登記済証を提出することができない場合には、その理由の□にチェックをします。なお、住宅ローンを完済したことなどによって不動産の抵当 11 権の登記を抹消する場合には、抵当権者である金融機関等から 登記識別情報又は登記済証が送付されるのが一般的です。

 

⑦登記申請の年月日及び申請先の法務局

「登記の申請をする年月日」を記載します。

「登記の申請先の法務局(登記所)」を記載します。 

登記の申請は、その申請する不動産の所在地を管轄する 法務局(登記所)に対してする必要があります。 管轄の法務局(登記所)については、法務局ホームペー ジでご案内しています。

※ 法務局ホームページ「管轄のご案内」

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html

 

申請人兼義務者代理人

抵当権者(金融機関等)から登記申請の委任を受けた申請人 (不動産の所有者)の住所及び氏名を記載し、「印」の箇所に 押印します(認印で可)。

この住所及び氏名の記載は、「権利者」欄の権利者の住所及び氏名の記載と一致している必要があります。

提出された登記申請書の内容に誤りがあった場合や、提出書 類に不足等があった場合には、法務局(登記所)の担当者から連絡しますので、平日の日中に連絡を受けることができる電話番号(携帯電話の電話番号等)を記載します。

 

⑨登録免許税

登録免許税額は、不動産(土地又は建物)1物件につき、1,000円です。

(土地1物件と建物1物件の合計2物件ですと、2,000 円となります。)

 

⑩不動産の表示

登記の申請をする不動産の表示を、登記事項証明書等に記載されているとおりに正確に記載します。

不動産番号を記載した場合は、土地にあっては、土地の所在、地番、地目及び地積の記載を、建物にあっては、建物の所在、家屋番号、種類、構造及び床面積の記載を省略するこ とができます。

※不動産番号は、一筆の土地又は一個の建物ごとに付された13桁の番号で、登記事項証明書等に記載されていますが、登記申請書の作成において不動産番号の記載は任意ですので、不動産番号が分からないといったような場合には、記載は不要です。

 

抹消する抵当権の登記の順位番号を記載します。

この順位番号は、登記事項証明書等により確認することができます。

※「登記の目的」欄に、抹消する抵当権の登記の受付年月日・受付番号 を記載した場合には、順位番号の記載は不要です。

まとめ

今回のお話を下の表にまとめています。

抵当権をそのままにしておくとどうなるの? ・新たにその不動産を担保にして融資を受けることが難しくなるなどの不利益が生じる可能性があります。

・抵当権の設定をされた後に、引っ越しで住所が変わった場合、抵当権抹消の登記の前に住所変更の登記が必要となり、放置してしまうと、住所証明書類を集めるのに手間がかかる。

・取引銀行から送付される書類の中には、紛失・汚損してしまっても、再発行されないものがあるので、長期間放置すべきでない。

抵当権抹消の手続きの流れ ・抵当権抹消の手続きに必要となる書類を取引銀行から取り寄せます。

・「登記申請書」を作成し、取引銀行から送付された書類(例:委任状、解除証書等)と合わせて、不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。

・法務局では、登記申請書の作成代行はしてくれません。

・法務局では、窓口での対面やオンラインによる面談、電話といった方法で、手続案内を実施していますが、事前予約が必要となります。

抵当権抹消の登記申請書 ・「登記申請書」「添付情報」「登録免許税(収入印紙)」が必要となります。

・登記申請書は、A4の用紙、文字は、直接パソコン(又はワープロ)を使用して入力するか、黒色インク、黒色ボールペン等(インクが消せるものは不可)で、はっきりと記載し、記申請書が複数枚にわたる場合は、各用紙のつづり目に契印をする。

・取引銀行からの書類を確認しながら記入する。

 

司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、大阪(阿倍野区・阿倍野、天王寺)、東京(渋谷区・恵比寿、広尾)事務所にて「無料相談・出張相談」も受け付けております。どんな些細なご相談も親身になり耳を傾け、どのようなご依頼でもお客様のご希望、目的に近づけるよう励みます。お気軽にご相談、お問い合わせください。

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この記事の監修者

代表社員  柳本 良太(やなぎもと りょうた)

柳本 良太

「法律のトラブルで困っている人を助けることができる人間になりたい」という思いから18歳の時に一念発起し、2004年に宅地取引主任者試験に合格。続いて、2009年に貸金業務取扱主任者試験、司法書士試験に合格し、翌2010年に行政書士試験に合格。2010年に独立開業し、「やなぎ司法書士行政書士事務所(現:司法書士法人やなぎ総合法務事務所)」を設立し、代表社員・司法書士として「困っている人を助ける」ことに邁進する一方で、大手資格予備校講師として多くの合格者も輩出。

その後、行政書士法人やなぎKAJIグループ(現:行政書士法人やなぎグループ)を設立、桜ことのは日本語学院の開校などより広くの人のための展開を行いながら活躍中。

モットーは「顧客満足ファースト」と「すべてはお客様の喜びのために」。

 

<保有資格>

・宅地取引主任者(2004年取得)

・貸金業務取扱主任者(20009年取得)

・司法書士(2009年取得)

・行政書士(2010年取得)

<所属法人>

司法書士法人やなぎ総合法務事務所 代表社員

行政書士法人やなぎグループ 代表社員

やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役

桜ことのは日本語学院 代表理事

LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師

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