民法総則   (No.5)

2 制限行為能力者制度

( 2 ) 制限行為能力者の保護
制限行為能力者を保護するために,次の方法が認められています。
① 保護者の同意権・代理権・取消権・追認権
② 本人の取消権
※本人または保護者は,その行為を取り消すことができます。
取消権とは、「初めから無効であった」とみなされます。
原状(もとの状態)に回復するということです。
※・保護者の事前の同意がある場合
・保護者(法定代理人)が直接行った場合
その行為は初めから完全に有効です。
・保護者の追認(事後的な同意)をおこなった場合
取消権を失います。完全に有効です。
以下、制限行為能力者の種類によって取消権・同意権・代理権・追認権の有無が異なるので個々に見ていきましょう。

( 3 ) 未成年者
未成年者が法律行為(契約)を行うには、原則として、その法定代理
人 (保護者) の同意が必要です。
同意なく行われた行為は, 本人または法定代理人が取り消すことがで
きます。
(「同意不要の例外」)
次の3つの行為は、同意なく単独で行っても取消しはできません。
① 単に権利を得にまたは義務を免れる法律行為
例:単純贈与(負担のない贈与)を受けること
② 法定代理人が処分を許した財産の処分行為(事前の同意)
例:お小遣いや、お年玉を使う事
③ 法定代理人から営業を許された場合、その営業上の行為(包括的同
意)
例:祭りの出店や、不動産業を許可された場合の「業者」として行
う行為。出店の食べ物の売買や不動産の売買も、業者として行う場
合は,同意は不要です。

( 4 ) 成年被後見人
成年被後見人の行った行為は、本人または法定代理人(成年後見人)が取
り消すことができます。
※成年後見人に同意権は無い。(常に代理権のみ有り)
事理弁識能力を欠く常況の人(言葉の理解が出来ない人)に同意を与
えてもその行為ができない為です。
例:仮に法定代理人(弁護士や司法書士)が同意を与えていても本人
は常に取り消せます。
(「代理不要の例外」)
日用品の購入その他日常生活に関する行為(コンビニでの買い物等)は、
単独で行っても取消しはできません。
※言葉の理解が出来ない人でも、欲しいものを欲望のままにお金を出し
て買う場合があります。習慣的なものです
また,法定代理人は,成年被後見人の利益のため、日常生活に関する行為
を含め、成年被後見人を代理して法律行為を行うことができます。

( 5 ) 被保佐人
被保佐人には、日常生活に関する行為を含め、一般的な法律行為(契
約)を行うための判断能力があります。法定代理人(保佐人)の同意
は,原則として不要です。
※重要な財産上の行為を行うには,保佐人の同意が必要

<重要な財産上の行為(民法13条)>
例:
・借金をすること
・保証人となること
・不動産その他重要な財産の売買をすること
・相続の承認、放棄をすること
・新築,改築,増築,大修繕をすること
・5年を超える宅地の賃貸借をすること
・3年を超える建物の賃貸借をすること
※本人が同意を欲しくても、保佐人が同意を与えない場合、どうすれ
ばよいのか?
この同意に変わる許可を家庭裁判所からもらいます。
※上記の例でその同意,またはこれに代わる家庭裁判所の許可を得な
いでした契約は、本人または保佐人が取り消すことができます。
※保佐人には、原則として代理権はありません。
しかし代理権付与の家庭裁判所の審判で、特定の行為について保佐
人に代理権が与えられることがある。
特定の行為とは上記の(重要な財産上の行為)の中の一部をいう。

( 6 ) 被補助人
ほぼ一般成年者とかわらないので、原則として単独で有効な法律行
為が可能です。
※補助人には、原則として同意権・代理権はありません。
ただし、家庭裁判所から同意を要する旨又は代理権付与の審判を
受けた特定の行為については、補助人の同意が必要です。(同意権
、代理権付与の審判)
特定の行為とは上記の(重要な財産上の行為)の中の一部をいう。
※本人が同意を欲しくても、保佐人が同意を与えない場合、どうす
ればよいのか?
この同意に変わる許可を家庭裁判所からもらいます。

まとめ

( 7 ) 居住用不動産の処分についての裁判所の許可

成年後見人、保佐人、補助人が、制限行為能力者の居住用建物・居住用土地について売却・賃貸,賃貸借の解除、抵当権(担保)の設定その他これらに準する処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
※居住用の不動産に何かしらの処分がされると、住む場所が無くな
る可能性がありますよね。非人道的処分の可能性を裁判所に委ね
ています。
※許可なく行われた契約は無効です。(取消ではなく無効)
Q.居住用ではない高額の不動産も裁判所の許可がひつようですか?
A.不要です。あくまで居住用のみです。

 

 

※動画と一緒にこの記事を見てもらうほうが分かりやすいです。

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司法書士法人やなぎ総合法務事務所