離婚をする場合に、日本では、夫婦で話し合って離婚届を役所に提出する、協議離婚での離婚が最も多いです。
しかし、相手が離婚について同意してくれない、慰謝料や財産分与について折り合いがつかない場合は、裁判所に離婚訴訟を提起することが考えられます。
そのような場合、訴訟を起こす前に「調停離婚」という選択肢があります。
今回は、調停離婚について詳しく説明していきます。

 

 

 

1 離婚調停とは?
2 調停離婚を選択する時期
2-1 冷静な話し合いができない
2-2 離婚条件の折り合いがつかない
3 調停離婚のデメリット
4 離婚調停で知っておくべきポイント
5 まとめ

1 離婚調停とは?

離婚について当事者間の話合いがまとまらない場合や話合いができない場合に,裁判官や知見のある調停委員という専門家が当事者を仲介し、当事者間の合意を目指す手続きです。
調停手続では,離婚そのものだけでなく,離婚後の子どもの親権者を誰にするか,親権者とならない親と子との面会交流をどうするか,養育費,離婚に際しての財産分与や年金分割の割合,慰謝料についてどうするかといった財産に関する問題も一緒に話し合うことができます。

離婚訴訟は、裁判官が判決を下すこととなりますが、離婚調停は、裁判官の介入のもと、当事者で話し合って決めることとなります。
調停員から何らかの結論を強制されることはありません。

離婚調停は、離婚についての話し合いが進まない場合に、夫婦のどちらかが家庭裁判所に調停を申立て、調停官や調停委員を介して、相手と話し合いをします。

離婚の裁判をするには,原則として,調停の手続を経ることが必要です。裁判の前にまずは離婚の調停をすることとなります。

離婚調停は、話し合いの場なので、相手に自分の希望を強制することはできません。
そのため、相手が調停に出席しないからといって、無理やり連れてくることはできません。
また、調停の日程や時間、調停期日の回数など、裁判官の決めた予定に合わせて裁判所へ行かなければなりません。

裁判官や調停委員は一般的な「相場」を基準に考えるので、相場からかけ離れた要求は通りにくいこともあります。

当事者で離婚の合意ができた場合は、調停成立となりその場で離婚が成立し、裁判官は合意内容をまとめた「調停調書」を作成します。
この調停調書は、裁判の「判決」と同じ効力を持つものです。

例えば、離婚に際して、「夫は、養育費として月5万円支払う」という調停内容があったにもかかわらず、夫からの支払いがなかった場合に、「調停調書」によって夫の財産を差し押さえるなど、強制執行手続きを取ることができます。

離婚の調停が成立すると、申立人には,戸籍法による届出義務がありますので,調停が成立してから10日以内に,市区町村役場に離婚の届出をすることとなります。

当事者で離婚の合意に至らなかった場合は、調停不成立となり、「離婚訴訟」の手続きに移行していきます。

2 調停離婚を選択する時期

2-1 冷静な話し合いができない

離婚についての話し合いは、お互い感情的になって話が進まないことが非常に多いです。
また、DV事案や、モラハラ事案の場合、離婚についての話し合いになると、相手からの暴力や暴言によって、一切離婚話が進まなかったりします。

そのような場合は調停離婚の利用を考えてみましょう。
調停では、調停委員が間に入ってくれますし、法的な知識を持った裁判官が関わってくれるので、適切な方向で、対等に話を進めることができます。

2-2 離婚条件の折り合いがつかない

子どもの養育費・親権について合意できない、相手が慰謝料の支払いに納得してくれない、財産分与についてお互いの主張が合わないなど、いろいろな取り決めがまとまらない場合も、離婚調停の利用を検討してみるとよいでしょう。

離婚をする際には、以下のように決めておくべきことが多くあります。

離婚の合意 ・離婚をすること
 

子供に関すること

・親権

・養育費

・面会交流

 

お金に関すること

・慰謝料

・財産分与

・年金分割

・清算条項

その他 ・連絡先の通知義務

・強制執行承諾約款付公正証書作成への合意

離婚条件は、今後の生活の仕方に影響があり、またお金についての話が多くなるため、離婚前の冷静ではない状態で話し合いを進めることは難しいものです。

そのような際には、調停官や調停委員の第三者の客観的な意見を聞いて話し合うことで、公平な財産分与や子供の福祉を考えた親権の決定や養育費の取り決めをすることができるでしょう。

3 調停離婚のデメリット

ここまでは調停離婚の良い点をお伝えしてきましたが、デメリットについても説明していきます。

・相手が欠席すると手続きが進まない

調停は,双方が裁判所に出席して,話合いにより,自主的な解決を図る制度なので、相手方の協力が必要となります。
家事事件手続法には、正当な理由のない調停への欠席は過料に処される内容の規定はありますが、実務上、実際に過料に処されるケースはほとんどなく欠席を抑制する効果はあまりありません。
調停委員会は,相手方に出席するよう,書面や電話での出頭勧告をすることはありますが、強制することはできませんし、過料以上の制裁もありません。
相手方が出席しない場合や双方の合意ができない場合には,調停は不成立として終了することになり、この場合、離婚を求めたいときには,離婚の裁判を提起する必要があります。

・離婚問題の長期化・日常生活への影響

調停は、月に1回程度開かれるのが標準的です。
ケースによって異なりますが、だいたい3回~6回くらいの期日で終わることが多いです。
つまり、調停が終わるのは、申立てから4ヵ月ほどかかるのが平均的な期間になります。
また、この調停期日は平日しか設けられません。
仕事をしている人は仕事を休まなければなりませんし、幼い子供がいる場合は預け先を確保しなければならず、事前に準備しておかなければならないことがたくさん出てきます。
そして、調停では、どのような婚姻生活を送っていたのかといったプライベートなことを調停委員に説明することや、相手の身勝手な意見を調停委員から聞かされ不快な思いをすることもあります。
普通の相談と異なり、下手なことを言うと自分が不利になる、調停官や調停員を味方に付けなければならない、などと考え緊張が高まり、精神的にプレッシャーがかかることもあります。
日常的に調停のことを考えたりして、精神面にかかる負荷が多いといえるでしょう。

・調停委員には偏った意見の人もいる

離婚調停には、家庭裁判所の裁判官が務める調停官と調停委員という専門家が第三者として参加します。
調停委員の中には少なからず自己の人生観や価値観を押し付けてくるような人もいますし、本来であれば中立の立場でなければならないのにもかかわらず、相手の肩を持つ人や、説教を始めるような人もいます。
離婚調停の円満な成立には、調停委員の力量が欠かせないため、当事者が関与できない調停委員の選任によって結果が左右されてしまうという問題があります。

・調停調書が不完全な場合がある

調停が無事に成立した場合、調停調書という法的拘束力のある調書が作成されます。
しかし、この調停調書は必要最低限のことしか記載されないため、当事者が希望する取り決めや内容を入れてもらうことは難しいです。
それに対して、当事者が話し合い離婚条件に関して公正証書を作成する場合は、公正証書の内容は当事者が自由に決めることができるので、離婚後に想定できる問題を回避できるような予防文なども入れることができます。

・戸籍の記載

離婚調停が成立し離婚が確定した後は、家庭裁判所が作成した調停調書を管轄の市区町村役場に提出することで、戸籍に離婚の記載がされることになります。
しかし、その場合の戸籍の記載内容は、「何年何月何日離婚調停成立」と記載されるため、再婚相手が戸籍を見たときに、2人の話し合いで決着できなかったのだな、とあまり良いイメージを抱かれないかもしれません。

4 離婚調停で知っておくべきポイント

・調停費用

離婚調停には1枚1,200円の収入印紙が必要です。郵便局やコンビニで購入することができます。
離婚調停には1通450円の戸籍謄本を取得する必要もあります。
こちらは本籍のある市区町村の役所に行き、申請をすることで取得可能です。
家庭裁判所によって異なるのですが、およそ800円の切手代も必要になります。
家庭裁判所によっては種類の指定があったりするので、事前に確認を取っておくと安心でしょう。
離婚調停には住民票も必要です。こちらは1通300円ほどで発行可能です。
最近は市区町村の役場だけでなく、コンビニで取得可能なケースも増えています。
以上はどなたでも必要となる実費ですが、離婚調停への対応を弁護士に依頼する場合は、別途、相談費用が発生します。

ちなみに、協議離婚の場合、協議書を公正証書で作成したり、協議書作成を専門家に依頼したりすると、費用がかかります。
公正証書を作成する場合の公証役場への手数料は、協議書に記載する財産の金額により、下記の表の金額がかかります。

目的の価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 11000円
500万円を超え1000万円以下 17000円
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下 43000円
1億円を超え3億円以下 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額

協議書作成を弊所に依頼いただいた場合の費用は、協議書の記載内容によって金額は変わりますが、10,000円から承っております。

・離婚調停が終わるまでにかかる時間

離婚調停の期日はだいたい月に1度、3~6回程度行われるのが一般的です。
そうなると、申立てをしてから長くて半年程度かけて調停手続きを行うことになります。
その間に調停が成立すればその場で離婚が確定し、調停は終了となりますが、調停不成立の場合は、その後に離婚訴訟に移行します。
こちらも月に1度、3~6回程度、裁判の期日を開き裁判官が当事者の主張を聞いて、当事者が提出した証拠などを精査し、判決を下します。
離婚訴訟で当事者の主張が紛糾している場合、離婚調停より多くの期日が開かれることが多いです。
長い場合、1年以上裁判で争うことも珍しくはありません。
離婚調停の開始から裁判の決着がつくまでは1年以上かかることが多いと考えておきましょう。

・離婚調停では、相手と顔を合わせなければならないのか

離婚調停は「話し合い」ですが、顔を突き合わせて話合いをするわけではありません。
離婚調停が始まると、まずは裁判官から調停手続きの説明がされます。
この場は、両者そろって裁判官から話を聞くことになります。
その後、離婚調停を申し立てた人から別室に呼ばれ、裁判官・調停委員と面談をして、自分の主張・希望を述べたり、裁判官・調停委員から質問をされたり、アドバイスを受けたりします。
その後、退室して、次は相手が別室に呼ばれ、裁判官・調停委員を通してこちら側の主張・希望を伝えてもらったうえで、相手の主張・希望を裁判官・調停委員が聞き取る、といったように交互に進めていきます。
なので、相手と顔を突き合わせて話をする必要はありません。
ただし、最初の調停手続きの説明の際や廊下ですれ違うなど、顔を合わせてしまう可能性もあります。
心配であれば、調停申し立ての時に裁判所に顔を合わせてたくないと申し添えることで一定の配慮は受けることができます。
また、弁護士などの専門家を代理人にすることで自分は裁判所に行かなくてよくする方法もあります。
ただ、離婚調停が成立する日は必ず裁判所に行かなければならず、裁判官による調停条項の最終確認があるため、2人が同席しなければなりません。

ただし、通常とは異なり、相手からDV被害を受けていた事案などでは特別の配慮をしてもらうことができます。
当事者それぞれが別々の部屋に待機していて、調停委員が移動する形となります。
そうすると、廊下などで相手とすれ違うこともありませんし、相手が押しかけてくることもありません。また、行きや帰りの時間もずらしてもらうことができます。
離婚調停のやり方を事案に応じて工夫することで、DV夫(妻)による帰り道での尾行や追跡・自宅特定などを防止することができます。

・「調停委員」とはどういった人なのか

調停委員とは「一般市民の良識を反映」させるために「社会上の豊富な知見を有した人」の中から選任されます。
基本的には、弁護士や大学教授、離婚について積極的に活動しているNPO法人の代表など専門的な知識を持った人や地域社会に長らく貢献してきた人など裁判所の基準で選ばれます。
裁判官とは異なる立場で、一般的な了見を備えた人に客観的に参加してもらい、柔軟な解決を図ろうという趣旨です。
離婚関係の場合だと男性・女性の調停委員が1人ずつ選任されることが多いです。

5 まとめ

今回のお話に関連してこちらの記事もご参照ください。

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今回のお話を下の表にまとめています。

・離婚調停とは? ・裁判官や知見のある調停委員という専門家が当事者を仲介し、当事者間の合意を目指す手続き

・裁判官や調停委員は一般的な「相場」を基準に考えるので、相場からかけ離れた要求は通りにくい

・調停成立が成立すると、離婚が成立し、裁判の「判決」と同じ効力を持つ「調停調書」が作成される

・調停離婚を選択する時期 ・冷静な話し合いができないとき

・DV事案や、モラハラ事案のとき

・離婚条件の折り合いがつかないとき

・調停離婚のデメリット ・相手が欠席すると手続きが進まない

・離婚問題が長期化して日常生活への影響が大きい

・調停委員には偏った意見の人もいる

・調停調書が不完全な場合がある

・戸籍に「何年何月何日離婚調停成立」と記載される

・離婚調停で知っておくべきポイント ・費用は、収入印紙など実費の他、弁護士に相談した場合別途費用がかかる

・離婚調停の期日はだいたい月に1度、3~6回程度行われて、申立てをしてから半年程度かかる

・通常の場合、最初の調停手続きの説明の際や廊下ですれ違うなど、相手と顔を合わせてしまう可能性がある

・調停委員は、弁護士や大学教授、離婚について積極的に活動しているNPO法人の代表など専門的な知識を持った人や地域社会に長らく貢献してきた人などが選ばれ、離婚関係の場合だと男性・女性の調停委員が1人ずつ選任されることが多い

司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、大阪(阿倍野区・阿倍野、天王寺)、東京(渋谷区・恵比寿、広尾)事務所にて「無料相談・出張相談」も受け付けております。どんな些細なご相談も親身になり耳を傾け、どのようなご依頼でもお客様のご希望、目的に近づけるよう励みます。お気軽にご相談、お問い合わせください。

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この記事の監修者

代表社員  柳本 良太(やなぎもと りょうた)

柳本 良太

「法律のトラブルで困っている人を助けることができる人間になりたい」という思いから18歳の時に一念発起し、2004年に宅地取引主任者試験に合格。続いて、2009年に貸金業務取扱主任者試験、司法書士試験に合格し、翌2010年に行政書士試験に合格。2010年に独立開業し、「やなぎ司法書士行政書士事務所(現:司法書士法人やなぎ総合法務事務所)」を設立し、代表社員・司法書士として「困っている人を助ける」ことに邁進する一方で、大手資格予備校講師として多くの合格者も輩出。

その後、行政書士法人やなぎKAJIグループ(現:行政書士法人やなぎグループ)を設立、桜ことのは日本語学院の開校などより広くの人のための展開を行いながら活躍中。

モットーは「顧客満足ファースト」と「すべてはお客様の喜びのために」。

 

<保有資格>

・宅地取引主任者(2004年取得)

・貸金業務取扱主任者(20009年取得)

・司法書士(2009年取得)

・行政書士(2010年取得)

<所属法人>

司法書士法人やなぎ総合法務事務所 代表社員

行政書士法人やなぎグループ 代表社員

やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役

桜ことのは日本語学院 代表理事

LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師

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