今年の4月27日から新制度の「相続土地国庫帰属制度」が開始しました。
この制度は、相続財産のうち、不要な土地を国に引き取ってもらうことができる制度です。
いくつか条件がありますが、この制度を利用すると、財産を相続した後に、一部の不要な土地のみを国に引き取ってもらうことができます。
数回にわたって、この制度の利用方法を説明していきますので、遠方の土地の相続でお困りの方などのご参考になれば幸いです。

 

目次
1 制度利用の相談
2 制度利用の申請ができる人
3 申請に必要となる書類
4 まとめ

 

1 制度利用の相談

 

まず、この制度を利用できる人は、“相続や遺贈”で土地を取得した人です。
この制度が始まる前に土地を相続した人でも本制度が利用できます。
共有で相続した土地でも、共有者全員で申請しなければなりませんが、制度を利用することができます。
ただし、相続以外の、売買や生前贈与で受け取った場合は、対象外となります。
また、引き取ってもらえる土地についても条件があります。
建物が建っている土地であったり、山奥など土地の所在や隣地との境界が明らかでなかったり、担保権がついている場合等は、制度利用の申請ができません。
その他にも様々な制限や条件がありますので、注意が必要となります。
法務局へ承認申請をして、承認が下りると、負担金を支払った上で国に不要な土地を引き取ってもらえます。

制度利用の相談は、全国の法務局において対応してもらえます。
簡単な内容であれば、電話でも対応可能となっています。
ただし、実際に承認申請をするのは、その土地の管轄法務局となりますので、個別具体的な相談の場合、管轄法務局を勧められる場合もあります。
法務局で相談する場合は事前予約が必要となりますので、まずはお近くの法務局へ問い合わせてみるとよいかと思います。
相談時間の目安は30分ほどとなっていますので、お話が長くなる場合は何度か法務局へ足を運んでいただく場合もあります。

相談に行かれる方は、その土地の所有者以外にも、親族の方でも可能です。
ただし、相談の中で、土地の所有者と全く関係がないと判断された場合は、相談を断られてしまうこともあります。

相談の中では、相談者の抱える問題に合わせて、国庫帰属制度以外にも、関係機関による寄付受けや相続放棄など、他の手段も紹介してもらえます。

注意点としては、相談への回答は、相談者が持参した資料の範囲内でのものであり、実際に申請が承認されることを保証してもらえるわけではありません。
承認には、提出資料の他に実地調査もされるので、その結果によって判断が異なる可能性があるからです。
また、申請には一定期間が必要となるので、すぐに承認の可否が分かるわけではありません。

2 制度利用の申請ができる人

 

相続土地国庫帰属制度の利用申請ができるのは、相続や遺贈により土地の所有者となった方です。
他にも、共有の土地について、土地の共有持分を売買等により取得した方と相続で取得した方と両方いる場合に、共有者全員が共同してする場合は、申請ができます。

承認申請には、原則、申請者の記名と実印での押印が必要となります。
そして、本人確認のために印鑑登録証明書の提出も必要となります。この印鑑登録証明書の期限は特にありません。
公証役場にて、署名をした承認申請書について認証を受けている場合は、記名押印が不要となります。
また、記名押印した承認申請書について認証を受けた場合は、法務局への印鑑登録証明書の提出は不要となります。
承認申請者が法人で、法務局へ印鑑届出をしている場合、申請書に会社法人等番号を記載していれば、印鑑証明書の添付は不要です。

承認申請者が未成年である場合は、その法定代理人(通常は親権者である親)の同意を証する書面が必要となります。
法定代理人が承認申請書に記名押印して代理人の印鑑登録証明書を提出した場合は、同意の書面、申請者本人の記名押印、本人の印鑑証明書は不要です。

共有の土地の場合は、共有者全員の記名押印と印鑑登録証明書が必要となります。

3 申請に必要となる書類

 

承認申請書には以下の添付書類が必要となります。

・「承認申請者が相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。により承認申請に係る土地の所有権又は共有持分を取得した者であるときは、当該者であることを証する書面」
具体的には、承認申請者が登記名義人の相続人であることを示す戸籍や法定相続情報一覧図の写し、遺産分割協議書(実印押印及び押印した人の印鑑登録証明書付き)、登記名義人から承認申請者にその土地を遺贈する旨が記載された遺言書、相続人である承認申請者の住所又は氏名を示す住民用の写しや戸籍の附票の写し等です。
登記記録のみでは確認できないことがある場合、さらに必要となる書類があります。

・「法定代理人によって承認申請をするときは、戸籍事項証明書その他その資格を証する書面」
具体的には、未成年者の親権者については戸籍事項証明書等が、成年被後見人の成年後見人については成年後見登記事項証明書又は審判書謄本等です。
不在者財産管理人又は相続財産管理人については、裁判所による選任を証する決定書謄本等及び裁判所の許可を証する決定書謄本等です。

・「承認申請者が法人であるときは、当該法人の代表者の資格を証する書面」
具体的には、当該法人の登記事項証明書や代表者資格証明書です。
なお、承認申請書に会社法人等番号を記載している場合、法人の登記事項証明書にて法人の代表者であることが確認できるときは、この書面は添付不要となります。

・「承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面」
具体的には、登記所備付地図等や、国土地理院が公開している地理院地図などで、承認申請者が認識している土地の位置及び範囲を示したものです。

・「承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真」
具体的には、申請土地の全景及び近景を撮影した写真であって、上記の図面におけるそれらの位置関係を明らかにしたものです。
申請土地が広大であり、全景を1枚の写真で明らかにすることが困難である場合には、航空写真や全体の関係を明らかにした複数枚の写真で大丈夫です。

・「承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真」
具体的には、各境界点を示すもの(境界標、ブロック塀又は道路のへり等の地物、簡易な目印等をいい、審査時及び国庫帰属時において確認可能なものであることを要する。)を明確に撮影した写真であって、上記の図面におけるそれらの位置関係を明らかにしたものです。

・「法第11条第1項の規定により承認申請に係る土地の所有権が国庫に帰属した場合には当該土地の所有権が国庫に帰属したことを原因とする国が登記権利者となる所有権の移転の登記を官庁が嘱託することを承諾したことを証する書面」
具体的には、承認申請に係る土地の所有権が国庫に帰属した場合、国庫帰属後に土地を管理する国の機関によって、国の機関への所有権の移転の登記嘱託をすることを承諾する旨が記載されている書面です。

承認申請書類は、その土地を管轄する法務局へ提出します。
承認申請書類の提出は、書面提出に限られ、オンラインによる申請や書類提出は認められていません。
隣接する二つ以上の土地について承認申請する場合で、管轄法務局が二つ以上存在するときは、そのいずれかの管轄法務局に承認申請書類を提出することができます。

承認申請には、審査手数料がかかります。
なお、承認申請後は、いかなる理由があっても、納付した審査手数料を返還してもらうことはできません。
なので、十分に考えてから申請をするべきでしょう。
さらに、承認された場合は、国に所有権を移転するために、負担金の支払いが必要となります。
原則、土地一つごとに20万円です。
負担金の通知書を受け取ってから30日以内が納付期限です。
偽りその他不正の手段により承認を受けたことが判明したときは、承認が取り消され、損害賠償責任を負う可能性がありますので、気を付けましょう。
審査手数料の話に戻りますが、この手数料は印紙で法務局へ納めます。
納付金額に不足がある場合、2週間の補正期間が与えられますので、この期間内に追加で納付すれば申請は却下とはされません。
逆に、間違って多く納付した場合は、法務局から連絡がありますので、払戻手続きをすることで返金してもらえます。

4 まとめ

 

今回のお話を下の表にまとめています。

・制度利用の相談 ・全国の法務局において対応してもらえる。

・簡単な内容であれば、電話でも対応可能。

・個別具体的な相談の場合、管轄法務局を勧められる場合もある。

・相談者は、その土地の所有者以外にも、親族の方でも可能。

・相談への回答は、実際に申請が承認されることを保証するものではない。

・制度利用の申請ができる人 ・この制度を利用できる人は、相続や遺贈で土地を取得した人

・この制度が始まる前に土地を相続した人でも可能。

・土地の共有持分を売買等により取得した方と相続で取得した方と両方いる場合に、共有者全員が共同してする場合は、申請が可能。

・承認申請者が未成年である場合は、その法定代理人(通常は親権者である親)の同意が必要。

・申請に必要となる書類 ・承認申請者が登記名義人の相続人であることを示す戸籍や法定相続情報一覧図の写し、遺産分割協議書等。

・法定代理人によって承認申請をするときは、戸籍事項証明書その他その資格を証する書面。

・承認申請者が法人であるときは、当該法人の代表者の資格を証する書面。

・登記所備付地図等や、国土地理院が公開している地理院地図など承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面。

・申請土地の全景及び近景を撮影した写真であって、上記の図面におけるそれらの位置関係を明らかにしたもの。

・各境界点を示すものを明確に撮影した写真。

・国庫帰属後に土地を管理する国の機関によって、国の機関への所有権の移転の登記嘱託をすることを承諾する旨が記載されている書面。

 

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この記事の監修者

代表社員  柳本 良太(やなぎもと りょうた)

柳本 良太

「法律のトラブルで困っている人を助けることができる人間になりたい」という思いから18歳の時に一念発起し、2004年に宅地取引主任者試験に合格。続いて、2009年に貸金業務取扱主任者試験、司法書士試験に合格し、翌2010年に行政書士試験に合格。2010年に独立開業し、「やなぎ司法書士行政書士事務所(現:司法書士法人やなぎ総合法務事務所)」を設立し、代表社員・司法書士として「困っている人を助ける」ことに邁進する一方で、大手資格予備校講師として多くの合格者も輩出。

その後、行政書士法人やなぎKAJIグループ(現:行政書士法人やなぎグループ)を設立、桜ことのは日本語学院の開校などより広くの人のための展開を行いながら活躍中。

モットーは「顧客満足ファースト」と「すべてはお客様の喜びのために」。

 

<保有資格>

・宅地取引主任者(2004年取得)

・貸金業務取扱主任者(20009年取得)

・司法書士(2009年取得)

・行政書士(2010年取得)

<所属法人>

司法書士法人やなぎ総合法務事務所 代表社員

行政書士法人やなぎグループ 代表社員

やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役

桜ことのは日本語学院 代表理事

LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師

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