-
民法解説35 物権変動と対抗要件について 分かりやすく解説します。
物権 (No.35)
物権変動 ➀
- 物権変動と対抗要件
( 1 ) 物権変動
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
物権変動とは、売買や贈与による所有権の移転、抵当権や地上権の設定などをいいます。
物権変動は当事者の意思表示のみで、 その効力を生じます。
※諾成契約の意味
( 2 ) 対抗要件
不動産の二重譲渡があった場合は登記により決する
1回目の売買 AがBに売却した後、
2回目の売買 さらにAがCに売却
Bは第三者であるCに対しては、登記がなければ所有権の取得を対抗できません。(第三者Cに勝てない)
原則:Cは悪意でも、登記を先に備えればBに勝つ
例外:背信的悪意者(後日、説明します)
※B及びCは、当事者であるAに対して,登記がなくても所有権の取得を主張できます。
※登記を備える事のできなかったB又はCは、Aに対して責任追及をする事になります。(後日、説明します)
2023.05.06 司法書士 民法解説 やなぎ法律部 分かりやすく 解説 二重譲渡 対抗要件 大阪 あべの 天王寺 東京 渋谷 恵比寿
-
民法解説33・34 物権総則 物権を制するものは司法書士を制す 物権とは 妨害排除請求他
民法No,33物権総則①
民法No,34物権総則②
物権 (No.33.34)
物件総則
- 物権総則
( 1 )物権とは
特定のものを、直接的・排他的に支配する、物に対する権利です。
※強行法規(物権法定主義)
債権と違い自由に物件の内容を変えられない。
( 2 )物権の種類
➀ 占有権
物の所持、そのものを保護する権利
② 所有権
全面的支配権
➂ 用益物権
- 地上権
- 永小作権
- 地役権
- 入会権
④ 担保物件
- 留置権 (法定)
- 先取特権 (法定)
- 質権 (約定)
- 抵当権 (約定)
- 根抵当権 (約定)
※占有権・入会権・留置権・については不動産登記ができない
( 3 )物権的請求権
物件が侵害されたとき時には、それぞれの権利に基づいて、その侵害の除去を請求できる。
例:所有権に基づく物件的請求権
- 返還請求権
自己所有の土地の売買契約が解除された場合のその土地の明渡しの請求など
- 妨害排除請求権
隣地の竹木が倒れ自己所有の土地に木々等が侵入した場合にその木々を撤去する請求など
- 妨害予防請求権
隣地の竹木が自己所有の土地に倒れそうな場合の、 その木々を切除する請求など
2023.04.29
-
「固定資産税が6倍もとられる!?「空き家に関する法律」
今回は「空家等対策の推進に関する特別措置法」の改正について説明したいと思います。
令和5年3月3日に空家等対策の推進に関する特別措置法の一部改正が閣議決定されました。
この改正により対象者の方は固定資産税が大幅に増加する可能性があります。「老人ホームへ転居して自宅が空き家になっている」
「実家を相続したものの空き家のまま放置している」といった事情のある方の参考になれば幸いです。
- 固定資産税とは?
- 固定資産税って何?
- 固定資産税は誰がどのくらい払うの?
- 固定資産税の評価額の調べ方
- 空家等対策の推進に関する特別措置法でどう変わる?
- 「特定空き家」とは?
- 「特定空き家」に指定されるとどうなるの?
- 空き家をどうすればいいの?
- まとめ
固定資産税とは?
最初に固定資産税の基本について説明します。
固定資産税って何?
毎年1月1日現在に固定資産(土地や建物)を所有している方に課される税金です。
土地:住宅用地、田、畑、山林など
家屋:戸建て住宅、分譲マンションなど
固定資産税は誰がどのくらい払うの?
固定資産税を支払うのは、毎年1月1日現在に「固定資産課税台帳」に登録されている「所有者」(土地や建物をお持ち)の方です。
居住していなくても支払わなければいけません。
固定資産税の計算方法は、
【税額】 = 課税標準額 × 税率(1.4%)
課税標準額とは、
固定資産の価格(評価額)のことです。
家屋が建っている宅地の場合、課税標準の特例措置が適用され以下のようになります。●小規模住宅用地(200㎡以下の部分)課税標準額 = 評価額×1/6 ●一般住宅用地(200㎡を超える部分)課税標準額 = 評価額×1/3
家屋があることで土地の固定資産税が更地の場合より最大1/6に軽減されます。
固定資産税の評価額の調べ方
毎年4月から6月頃に市役所から届く納税通知書で評価額を確認することができます。
以下は納税通知書の見本です(大阪市の場合)。
他にも、市役所で評価証明書や土地・家屋価格等縦覧帳簿(名寄帳)を取得することでも確認できます。以下は名寄帳の見本です(大阪市の場合)。
空き家等対策の推進に関する特別措置法でどう変わる?
近年、空き家の数は増加を続けており、今後、更に増加が見込まれているため、
周囲に悪影響を及ぼす特定空き家の除却等の更なる促進に加え、周囲に悪影響を及ぼす前の段階から空き家の有効活用や適切な管理を確保することで、空き家対策が総合的に強化されます。
具体的には以下の様に変わります。
所有者の責務強化 現行の適切な管理の努力義務に加え、国、自治体の施策に協力する努力義務が追加されます。 空き家等の活用拡大 市区町村長は、空き家の所有者等に対し指針に合った活用を要請することができるようになります。 市区町村長は、空き家の管理や活用に取り組むNPO法人、社団法人等を空き家等管理活用支援法人として指定することができるようになります。
空き家等の管理の確保 市区町村長は、放置すれば特定空き家等になるおそれがある空き家等を管理不全空き家等として、 指導、勧告し、勧告を受けた管理不全空き家等の敷地は固定資産税の住宅用地特例を解除することができるようになります。
特定空き家等の除却等 市区町村長に特定空き家等の所有者等に対する報告徴収権を与え、特定空き家等に対する命令等の事前手続きを経るいとまがないときには、緊急代執行が行えるようになります。 これにより所有者不明時の略式代執行、緊急代執行の費用徴収が円滑化されます。
さらに市区町村長に財産管理人の選任請求権が与えられます。
「特定空き家」とは?
次のいずれかに当てはまる空き家が特定空き家とされます。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
具体的には、
・部材の破損や地盤が均等に沈下せず傾斜している状態などが原因で、建築物に著しい傾きが見られる。
・基礎に大きな亀裂、多数のひび割れ、変形又は破損が発生している。
・腐食又は蟻害によって土台に大きな断面欠損が発生している。
・基礎と土台に大きなずれが発生している。
・柱、はり等に大きな亀裂、多数のひび割れ、変形又は破損が発生している。
・腐食又は蟻害によって主要な柱等に大きな断面欠損が発生している。
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・排水等の流出による臭気の発生がある。
・浄化槽等の放置、破損等による汚物の流出、臭気の発生がある。
・ごみ等の放置、不法投棄による臭気の発生がある。
・ごみ等の放置、不法投棄により、多数のねずみ、はえ、蚊等が発生している。
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・屋根、外壁等が、汚物や落書き等で外見上大きく傷んだり汚れたまま放置されている。
・多数の窓ガラスが割れたまま放置されている。
・敷地内にごみ等が散乱、山積したまま放置されている。
・立木等が建築物の全面を覆う程度まで繁茂している。
・看板が原型を留めず本来の用をなさない程度まで、破損、汚損したまま放置されている。
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
・立木の腐朽、倒壊、枝折れ等が生じ、近隣の道路や家屋の敷地等に枝等が大量に散らばっている。
・立木の枝等が近隣の道路等にはみ出し、歩行者等の通行を妨げている。
・空き家等に住みついた動物等が原因で、動物の鳴き声その他の音が頻繁に発生したり、動物のふん尿
その他の汚物の放置により臭気が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている。
・住みついた動物が周辺の土地・家屋に侵入し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある。
・門扉が施錠されていない、窓ガラスが割れている等不特定の者が容易に侵入できる状態で放置されている。
要は管理ができていなくそのまま放置しておくと周辺に被害がでる可能性がある空き家です。
「特定空き家」に指定されるとどうなるの?
「特定空き家」の指定は次のような流れで行われます。
空き家の立ち入り調査→特定空き家に指定→助言・指導→勧告→命令→行政代執行 調査の結果「特定空き家」に指定されると、自治体から「助言・指導」が行われ、改善されない場合「勧告」がなされます。勧告を受けると、固定資産税の宅地の特例措置から除外され、その結果翌年以降の固定資産税はおおよそ更地状態と同等の最大6倍となる場合があります。
さらに自治体からの「命令」に応じずに違反となった場合、最大50万円以下の過料が科せられてしまいます。
空き家をどうすればいいの?
空き家管理の手間、固定資産税など管理コストが発生することを考えますと、次のように不動産を活用することをお勧めします。
- 売却する
空き家の売却の場合、「空き家の譲渡所得の3000万円控除」の特例適用を受けることによって、所得税や住民税の納税額を大幅に抑えて売却することができます。
※この適用を受けるには、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること等様々な条件がありますためご注意下さい。
また空き家を相続した際に相続税を納めている場合、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに売却すると、譲渡所得の計算上、売却した空き家に対応する相続税額を取得費に加算することができます。(相続税の取得費加算の特例)
ただし、「空き家の譲渡所得の3000万円控除の特例」と「相続税の取得費加算の特例」はいずれかの1つの利用となります。納税額が低くなる方の特例を利用しましょう。
- 解体する
空き家が所在する地域によっては、解体費用の補助制度を設けている自治体も存在します。首都圏では住宅の解体費用は100~200万円程度かかる場合が多いですが、最大でその半額を補助する制度もあります。空き家の解体を検討する際は、利用できる制度が無いか、空き家の所在する役所で事前に確認してみてください。
空き家管理の手間から開放される、「古家付き土地」より高く早く売却できるメリットがありますが、解体によって更地とする場合には、住宅用地から外れることで固定資産税が増加することとなりますのでご注意ください。
- 賃貸として貸し出す
空き家の状況次第では、リフォームすることで賃貸物件として再生させ、家を手放さずに、空き家管理の手間から開放されることができます。
安定した賃貸収入を得ることができれば、リフォームや解体費用、毎年の固定資産税の負担と相殺することができるでしょう。
ただし、借主が居住後、インフラなどの管理責任が問われる等リスクがあることに注意が必要です。
- 駐車場や農園として貸し出す
立地状況や土地の大きさにより方法は変わりますが、初期投資が少なく、手軽に開始できて比較的安定した収入を得られます。
駅前や幼稚園・保育園、小学校の周辺、幹線道路沿いなどの地域であれば、コインパーキングとすることも可能でしょう。コインパーキングは駐車場化の費用を全てコインパーキング運営会社が負担します。
また、一般的な月極駐車場よりも高く貸せる可能性があり、初期投資なく高収益が見込めます。
まとめ
今後は空き家のまま放置することで、固定資産税が増加したり、所有者等として責任を問われることとなりますので、専門家へ相談されることをお勧めします。
ここまでのお話をまとめたものが以下の表です。
固定資産税とは? ・毎年1月1日現在に固定資産(土地や建物)を所有している方に課される税金 ・固定資産税の計算方法は、
【税額】 = 課税標準額 × 税率(1.4%)
家屋が建っている宅地の場合、課税標準の特例措置が適用されます。
・固定資産税の評価額は納税通知書、評価証明書や土地・家屋価格等縦覧帳簿(名寄帳)でできる
空き家等対策の推進に関する特別措置法でどう変わる? ・空き家等対策の推進に関する特別措置法の変更点 所有者の責務強化
空き家等の活用拡大
空き家等の管理の確保
特定空き家等の除却等
・「特定空き家」とは次のいずれかに当てはまる空き家
そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
・「特定空き家」に指定されるとどうなるの?
勧告を受けると、固定資産税の宅地の特例措置から除外され、翌年以降の固定資産税はおおよそ更地状態と同等の最大6倍となる場合がある
自治体からの「命令」に応じずに違反となった場合、最大50万円以下の過料が科せられる
空き家をどうすればいいの? 売却する 解体する
賃貸として貸し出す
駐車場や農園として貸し出す
弊所にも空き家の相談は沢山あります。
もし空き家にお困りの方は、税金、登記、残置物の撤去、売却までフルサポートも可能です。
全てお任せください!!
司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、大阪(阿倍野区・阿倍野、天王寺)、東京(渋谷区・恵比寿、広尾)事務所にて「無料相談・出張相談」も受け付けております。どんな些細なご相談も親身になり耳を傾け、どのようなご依頼でもお客様のご希望、目的に近づけるよう励みます。お気軽にご相談、お問い合わせください。
「無料相談」のご予約は下記の「空き状況検索」からできます。是非ご活用ください。
相続サイト 所在地 - 大阪市阿倍野区阿倍野筋三丁目10番1号 あべのベルタ 3009号
- 東京都渋谷区東3-6-18 プライムハウス 203号
問い合わせ - 電話番号:0120-021-462
- メール:大阪、東京
- Web予約
その他 -
- 受付時間 9:00 ~ 20:00
- 土日祝日:10:00~18:00
- 電話予約により時間外対応可能
著者情報
代表 柳本 良太
- <所属>
- 司法書士法人 やなぎ総合法務事務所 代表社員
- 行政書士法人 やなぎKAJIグループ 代表社員
- やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役
- 桜ことのは日本語学院 代表理事
- LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師
- <資格>
- 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
- 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
- 2009年 司法書士試験合格
- 2010年 行政書士試験合格
2023.04.28 「空き家に関する法律」, 6倍, 司法書士, 固定資産税, 行政書士
- 固定資産税とは?
-
不動産の共有者が不明の場合について【2023年4月1日民法改正】
今回は2023年4月1日施行予定の改正民法について説明してきたいと思います。
2023年4月1日、日本の民法が改正されました。
今回の民法改正で「共有不動産を売却したいが、他の共有者と連絡が取れない」等の場合のルールが変更・追加されました。
本来、共有名義の不動産は、持分だけの売却であれば単独で可能なのですが、全体を売却するのであれば共有者全員の同意がないと売却できません。
しかし共有者が複数人いたり、相続が発生していたり、土地を売却したいが共有している人と連絡が取れない等でお困りの方がいらっしゃるかと思います。
そういった方々の参考になれば幸いです。
是非最後までご覧くださいませ。
目次
- 土地・建物の管理制度についてのルール新設
- 今回の民法改正で何がどう変わったの?
- 所有者不明の場合
- 管理不全の場合
- 不明共有者がいる場合への対応についての改正
- 今回の改正でどう変わったの?
- 共有物の管理・変更
- 所在等不明共有者の不動産の共有持分を取得・処分する制度について
- 遺産分割長期未了状態への対応について
- まとめ
【民法改正】土地・建物の管理制度についてのルール新設
最初に所有者不明・継続的な管理ができない不動産についてのルール新設についての
説明をします。
今回の改正でどう変わったの?
改正後に追加された条文は以下のとおりです。
(所有者不明土地管理命令) 改正民法第264条の2
裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という。)をすることができる。
(中略)
4 裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない。
(所有者不明土地管理人の権限)
第264条の3
前条第四項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。
2 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。
一 保存行為
二 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
(所有者不明建物管理命令)
改正民法第264条の8
裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(第四項に規定する所有者不明建物管理人をいう。以下この条において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。
(中略)
4 裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、当該所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。
(以下略)
(管理不全土地管理命令)
第264条の9
裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(第三項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。
(中略)
3 裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。
(管理不全土地管理人の権限)
第264条の10
管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。
2 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。
一 保存行為
二 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
3 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。
(管理不全建物管理命令)
第264条の14
裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(第三項に規定する管理不全建物管理人をいう。第四項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という。)をすることができる。
(中略)
3 裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。
(以下略)
「何を言っているかわからない・・・」と思われる方が多いと思います。以下の節で詳しく説明していきます。
所有者不明の場合
所有者を知ることができない又はその所在を知ることができない不動産について、
利害関係人が裁判所に請求することで、裁判所が必要と認めるときは、所有者不明土地・建物管理人による管理を命ずる処分を裁判所ができるようになりました。
所有者不明土地・建物管理人は保存行為と所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為を行うことができます。保存行為と所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為を超える行為は裁判所の許可を得ることで行うことができます。
管理不全の場合
所有者による土地・建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害されまたは侵害されるおそれがある場合、利害関係人が裁判所に請求することで、裁判所が必要と認めるときは、管理不全土地・建物管理人による管理を命ずる処分を裁判所ができるようになりました。
不明共有者がいる場合への対応についての改正
不明共有者がいる場合への対応についての改正について説明します。
今回の改正でどう変わったの?
改正後の条文は以下のとおりです。
(共有物の変更) 改正民法第251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
(共有物の管理)
改正民法第252条
共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
3 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
4 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年
二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年
三 建物の賃借権等 三年
四 動産の賃借権等 六箇月
5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
(所在等不明共有者の持分の取得)
第262条の2 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が二人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。
(中略)
3 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、第一項の裁判をすることができない。
(以下略)
(所在等不明共有者の持分の譲渡)
第262条の3 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。
(以下略)
「何を言っているかわからない・・・」と思われる方が多いと思います。以下の節で詳しく説明していきます。
共有物の管理・変更
共有者の1人が誰かわからないまたはどこにいてるかもわからないが
「共有物の管理について決めたい」という場合があると思います。
この場合裁判所は、所在等不明共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができます。
例えばABCの3人で共有しているがAが行方不明だとします。
本来はABCの持分価格の過半数で決めます。しかしこの場合Bが裁判所に請求することでBCの持分価格の過半数で決めることができます。
また、共有物に変更を加える場合、ABCの3人で共有しているときは全員の同意が必要となります。しかし、Aが行方不明等の場合はBが裁判所に請求することでBCのみの同意で決めることができます。
所在等不明共有者の不動産の共有持分を取得・処分する制度について
共有者の1人が共有者を知ることができないとき・その所在を知ることができないとき裁判所に請求することで所在等不明共有者の持分を取得することができます。
請求をした共有者が2人以上の場合は、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得します。
ただし、所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合、相続開始の時から10年以上経過している必要があります。
共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき裁判所に請求することで所在等不明共有者以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができます。
例えば、不動産をABCで共有しているがAが行方不明の場合、裁判所に請求することでBCの持分を全部Xに譲渡することを条件にAの持分をXに譲渡できるということです。
遺産分割長期未了状態への対応について
最後に以下の条文について説明します。
(裁判による共有物の分割) 第258条の2
共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。
2 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から十年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。
3 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第一項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から二箇月以内に当該裁判所にしなければならない。
上記については具体例に沿って説明します。
事例 甲不動産をAとBで共有していました。しかしBが亡くなりました。Bの相続人はB1とB2です。
この事例の場合、相続開始の時から10年を経過するまで、共有物の分割の裁判をすることができません。相続開始の時から10年を経過するとA、B1とB2は共有物の分割の裁判をすることができます。しかし、裁判所から共有物分割の請求の通知があったときから2か月以内にBの相続人であるB1またはB2が異議の申出をしたときは共有物の分割の裁判をすることができません。
まとめ
以上が、2023年4月1日施行民法についてのお話でした。
ここまでのお話をまとめたものが以下の表です。
土地・建物の管理制度についてのルール新設 ・所有者を知ることができない又はその所在を知ることができない不動産について、利害関係人が裁判所に請求することで、裁判所が必要と認めるときは、所有者不明土地・建物管理人による管理を命ずる処分を裁判所ができる ・所有者による土地・建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害されまたは侵害されるおそれがある場合、利害関係人が裁判所に請求することで、裁判所が必要と認めるときは、管理不全土地・建物管理人による管理を命ずる処分を裁判所ができる
不明共有者がいる場合への対応についての改正 ・裁判所は、所在等不明共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。 ・共有者の1人が共有者を知ることができないとき・その所在を知ることができないとき裁判所に請求することで所在等不明共有者の持分を取得することができる。
・共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき裁判所に請求することで所在等不明共有者以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。
遺産分割長期未了状態への対応について ・共有物の持分が相続財産に属する場合に相続開始の時から10年を経過するまで、共有物の分割の裁判をすることができない。 司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、大阪(阿倍野区・阿倍野、天王寺)、東京(渋谷区・恵比寿、広尾)事務所にて「無料相談・出張相談」も受け付けております。どんな些細なご相談も親身になり耳を傾け、どのようなご依頼でもお客様のご希望、目的に近づけるよう励みます。お気軽にご相談、お問い合わせください。
「無料相談」のご予約は下記の「空き状況検索」からできます。是非ご活用ください。
相続サイト 所在地 - 大阪市阿倍野区阿倍野筋三丁目10番1号 あべのベルタ 3009号
- 東京都渋谷区東3-6-18 プライムハウス 203号
問い合わせ - 電話番号:0120-021-462
- メール:大阪、東京
- Web予約
その他 -
- 受付時間 9:00 ~ 20:00
- 土日祝日:10:00~18:00
- 電話予約により時間外対応可能
著者情報
代表 柳本 良太
- <所属>
- 司法書士法人 やなぎ総合法務事務所 代表社員
- 行政書士法人 やなぎKAJIグループ 代表社員
- やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役
- 桜ことのは日本語学院 代表理事
- LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師
- <資格>
- 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
- 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
- 2009年 司法書士試験合格
- 2010年 行政書士試験合格
- 土地・建物の管理制度についてのルール新設
-
民法解説31 期限について やさしく分かりやすく説明します 他と比較して覚えると覚えやすいです
https://youtu.be/bz1Hhoce8eI
民法総則 (No.31)
条件・期限 ②
1.条件・期限とは
- 条件:法律行為(契約など)の発生、消滅に条件をつける事
※不確定な事実(条件)
➀停止条件
条件が成就(成立)して効力が発生する
例:試験に合格したら車をあげる(贈与契約)
②解除条件
条件が成就(成立)して効力が消滅する
例:車をあげるよ(贈与契約)でも今年の試験
に落ちたらこの契約はなかったことにする。
→結果、貰った車を返さなければならない
- 期限:法律行為(契約など)の発生、消滅に期限をつける事
※確実な事実(期限)
➀始期
期限の到来まで請求できない
例:毎月月末に家賃を支払う(賃貸借)
→家主は月末まで家賃請求ができない
②終期
期限の到来時に消滅
例:今年の年末まで車を貸してあげる(賃貸借)
→年末に終了する。返さなければならない
( 2 ) 期限
➀(期限の到来の効果)
第百三十五条 法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が
到来するまで、これを請求することができない。
2 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時
に消滅する。
a.) 確定期限:到来する時期も確定している場合
例:1年後(〇月〇日)に売却する等
b.)不確定期限:到来する時期が不確定な場合
例:雨が降ったら傘をあげるよ
例:Aが死んだら売却する等
②(期限の利益及びその放棄)
第百三十六条 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
例:売買代金を支払うのは1年後でいいよ。
例:貸したお金を返すのは3年後でいいよ。
2 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利
益を害することはできない。
例:1年間の利息の設定があれば、1年以内に返済してもそ
の利息を支払わなければならない
➂(期限の利益の喪失)
第百三十七条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することがで
きない。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
例:抵当権の設定されている不動産を失火により燃やした等
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
例:債務者が抵当権の設定をなかなか行わない
例:債務者が保証人をなかなか見つけない
※期限の利益は債務者の信用によるものです。
その信用を失ったと考えれば良い
2023.04.08
-
民法解説30 条件について お客様満足度97%!分かりやすく説明します
民法総則 (No.30)
条件・期限 ➀
1.条件・期限とは
- 条件:法律行為(契約など)の発生、消滅に条件をつける事
※不確定な事実(条件)
➀停止条件
条件が成就(成立)して効力が発生する
例:試験に合格したら車をあげる(贈与契約)
②解除条件
条件が成就(成立)して効力が消滅する
例:車をあげるよ(贈与契約)でも今年の試験
に落ちたらこの契約はなかったことにする。
→結果、貰った車を返さなければならない
- 期限:法律行為(契約など)の発生、消滅に期限をつける事
※確実な事実(期限)
➀始期
期限の到来まで請求できない
例:毎月月末に家賃を支払う(賃貸借)
→家主は月末まで家賃請求ができない
②終期
期限の到来時に消滅
例:今年の年末まで車を貸してあげる(賃貸借)
→年末に終了する。返さなければならない
( 1 ) 条件
➀(条件が成就した場合の効果)
第百二十七条 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生
ずる。
2 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
3 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせ
る意思を表示したときは、その意思に従う。
②(条件の成就の妨害等)
第百三十条 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその
条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことが
できる。
例:試験を受ける事の妨害をしたなど。
2 条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就
させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。
例:カンニングをして合格したなど。
➂(既成条件)
第百三十一条 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件
が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件である
ときはその法律行為は無効とする。
例:すでに合格している(無条件で車をもらえる)
例:すでに今年は不合格(契約無効)
2 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、そ
の条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件で
あるときはその法律行為は無条件とする。
例:すでに不合格(無効)
例:すでに合格している(無条件、車を返さなくてよい)
3 前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しな
かったことを知らない間は、第百二十八条及び第百二十九条の規定を準用する。
④(不能条件)
第百三十三条 不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。
2 不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。
例:5年前の試験に受かったら・・・(無効)
例:車をあげるよ(贈与契約)でも、あなたが1時間息を
止めれたら、契約はなかった事にする
(無条件、車を返さなくてよい)
⑤(不法条件)
第百三十二条 不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしな
いことを条件とするものも、同様とする。
例:殺人したら車をあげるなど(契約無効)
※犯罪の助長となる為
2023.04.01
-
民法解説28・29 時効完成の猶予と更新について
民法総則 (No.28・29)
時効 ⑥
5.時効の完成猶予及び更新
➀(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法若しくは家事事件手続法による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。
※債務名義(勝ち負けの書面)を得るための裁判等
※訴えを取り下げた場合:時効の完成猶予の適用はない。
※時効の更新:勝訴の確定判決など
※(判決で確定した権利の消滅時効)
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
民法26回で確定判決は10年に伸びる旨を説明しています。
②(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十八条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 強制執行
二 担保権の実行
三 民事執行法に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
四 民事執行法に規定する第三者からの情報取得手続
2 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。
※強制執行(差し押さえ)等(売り飛ばして、お金にする等)の裁判
※訴えを取り下げた場合:そこから6か月の猶予がある
➂(仮差押え等による時効の完成猶予)
第百四十九条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
一 仮差押え
二 仮処分
④(催告による時効の完成猶予)
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
※裁判外の請求の事
例:内容証明郵便(手紙)などで催促する
時効完成直前に裁判をしたいが、時間がないのでとり急ぎ催促します等。
⑤(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第百五十一条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
5 前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。
⑥(夫婦間の権利の時効の完成猶予)
第百五十九条 夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(承認による時効の更新)
第百五十二条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
例:債務を承諾(認める)など
利息の支払いや、債務の一部を弁済するなど
※債務者が債務の承認をすると、物上保証委任や保証人は否定できません。
2023.03.25
-
相続登記の義務化だけでない?不動産登記の改正について(休眠担保権編)
今回は2023年4月1日施行予定の改正不動産登記法について解説してきたいと思います。
「不動産登記法の改正といえば相続登記が義務化されるという話では?」と思われる方もいるかと思います。
しかし、実は他にも改正があります。今回は2023年4月1日施行予定の改正不動産登記法をふまえて、休眠担保権について解説します。
「休眠担保権って何?」「昔の抵当権があるがどうやって消すの?」という方は本ブログを見て参考にしていただけると幸いです。
目次
1 休眠担保権とは?
1-1 休眠担保権とは?
1-2 休眠担保権は抹消すべき?
2 休眠担保権はどうやって抹消するの?(現行の法律の場合)
2-1 休眠担保権の抹消方法
2-2 除権決定による抹消
2-3 完済した証拠書類による抹消
2-4 供託による抹消
3 休眠担保権の抹消は改正でどう変わった?
4 まとめ
1 休眠担保権とは?
「そもそも休眠担保権って何?」と思う方も多いと思います。この節では休眠担保権の基本について説明します。
1-1 休眠担保権とは?
休眠担保権とは現在でも抹消されずに残っている明治・大正・昭和初期に設定された古い抵当権等をいいます。
休眠担保権は前述のように明治・大正・昭和初期に設定されたものですので抵当権者(債権者)が死亡・合併・解散などにより不明になっている、お金を借りていた本人も亡くなっているので当時の状況が聞けない等により困ってしまう場合が多いのです。
1-2 休眠担保権は抹消すべき?
休眠担保権を抹消しないことにより、過料を支払う必要があるというわけではありませんが、抹消の手続きをしない限り、休眠担保権はそのまま残り続けます。
「休眠担保権が残っている不動産は売却できるの?」という疑問を持つ方もおられると思います。これに関して法律は以下のように定めています。
民法第577条 買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。 簡単に言うと買主は担保を抹消するまで代金の支払いを拒否できるうえ、売主に「担保権を消す手続きを早くしろ」と言えると定めています。つまり、休眠担保権を抹消することなく売却することは難しいということです。
「休眠担保権が残っている不動産を担保に新たに金融機関からお金を借りることができるのか?」という疑問を持つ方もおられると思います。これについても、金融機関は1番での抵当権設定を希望する事が多いため休眠担保権が残っている不動産を担保に新たに金融機関からお金を借りるのは難しいと思われます。
また、休眠担保権を放置すると関係者が増加し、手続きが複雑化するため早めに抹消することをお勧めします。
2 休眠担保権はどうやって抹消するの?(現行の法律の場合)
ここまで読んでいただいた方は「休眠担保権の抹消はどうするの?」と思われたかもしれません。この節では休眠担保権の抹消方法について説明します。
2-1 休眠担保権の抹消方法
休眠担保権の抹消方法は複数存在します。休眠担保権の抹消方法について定めた法律は以下のとおりです。
不動産登記法第70条 登記権利者は、登記義務者の所在が知れないため登記義務者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成23年法律第51号)第99条に規定する公示催告の申立てをすることができる。 2 前項の場合において、非訟事件手続法第106条第1項に規定する除権決定があったときは、第60条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独で前項の登記の抹消を申請することができる。
3 第1項に規定する場合において、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第60条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。同項に規定する場合において、被担保債権の弁済期から20年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも、同様とする。
「何を言っているかわからない・・・」と思われる方が多いと思います。以下の表が簡単にまとめたものです。
① 除権決定による抹消 ② 完済した証拠書類による抹消
③ 供託による抹消
2-2 除権決定による抹消
裁判所に公示催告の申立を行い、除権決定を得ることで休眠担保権を抹消することができます。公示催告の申立には要件があります。要件は証明することが必要です。要件は以下のとおりです。
① 抹消対象の登記につき申立人が権利者であること ② 抹消対象の登記につき実態法上、不存在または消滅していること
③ 抹消対象の登記につき登記義務者が行方不明であること
④ 抹消登記申請であること
除権決定による休眠担保権の抹消はあまり利用されていません。理由としては上記の要件につき②の要件を満たすことが難しいからです。休眠担保権はその多くが抵当権者(債権者)死亡・合併・解散などにより不明になっている、お金を借りていた本人も亡くなっているので当時の状況が聞けない等であり、証明することが困難であるからです。
2-3 完済した証拠書類による抹消
休眠担保権を完済した証拠書類による抹消もあまり利用されていません。なぜなら、休眠担保権は前述のように明治・大正・昭和初期に設定されたもので完済した証拠書類がないことが多いからです。
2-4 供託による抹消
実務上、最も多い休眠担保権の抹消方法は供託による抹消です。その要件は以下のとおりです。
① 弁済期から20年を経過 ② 債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭の供託
③ 登記義務者の所在が知れないこと
④ 先取特権、質権又は抵当権の登記の抹消であること
供託とは法務省の説明によると「供託とは,金銭,有価証券などを国家機関である供託所に提出して,その管理を委ね,最終的には供託所がその財産をある人に取得させることによって,一定の法律上の目的を達成しようとするために設けられている制度です。」とのことです。
3 休眠担保権は改正でどう変わった?
2023年4月1日施行予定の改正不動産登記法で以下の条文が追加されます。
不動産登記法第70条の2 解散した法人の担保権(先取特権等)に関する登記について清算人の所在が判明しないために抹消の申請をすることができない場合において、法人の解散後30年が経過し、かつ、被担保債権の弁済期から30年を経過したときは、供託等をしなくとも、登記権利者(土地所有者)が単独でその登記の抹消を申請することができる
法務省によると改正の背景として「被担保債権が弁済等により消滅しても担保権の登記が抹消されず、登記がされてから長い年月を経た担保権の登記が残存していることがあり、これがあると不動産の円滑な取引を阻害する要因となる・登記義務者である法人の「所在が知れない」と認められる場合が限定されている上、貨幣価値が大きく変動しない現代においては供託要件を満たすことが困難な例が生ずることが予想される」としています。
この条文は①法人の解散後30年が経過していること、②弁済期から30年を経過している場合に単独で休眠担保権が抹消できることを意味しています。前述の供託による抹消との違いは供託の有無となります。
4 まとめ
以上が、2023年4月1日施行予定の改正不動産登記法をふまえた休眠担保権編についてのお話でした。ここまでのお話をまとめたものが以下の表です。
休眠担保権とは? ・休眠担保権とは現在でも抹消されずに残っている明治・大正・昭和初期に設定された古い抵当権等をいいます。 休眠担保権が残っているとどうなる? ・売却が困難 ・眠担保権が残っている不動産を担保に新たに金融機関からお金を借りることは困難
休眠担保権の抹消方法 ①除権決定による抹消 ②完済した証拠書類による抹消
③供託による抹消
・③が実務上、多い
改正でどう変わる? ・①法人の解散後30年が経過していること、②弁済期から30年を経過している場合に単独で休眠担保権が抹消できるようになった 司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、大阪(阿倍野区・阿倍野、天王寺)、東京(渋谷区・恵比寿、広尾)事務所にて「無料相談・出張相談」も受け付けております。どんな些細なご相談も親身になり耳を傾け、どのようなご依頼でもお客様のご希望、目的に近づけるよう励みます。お気軽にご相談、お問い合わせください。
「無料相談」のご予約は下記の「空き状況検索」からできます。是非ご活用ください。
相続サイト 所在地 - 大阪市阿倍野区阿倍野筋三丁目10番1号 あべのベルタ 3009号
- 東京都渋谷区東3-6-18 プライムハウス 203号
問い合わせ - 電話番号:0120-021-462
- メール:大阪、東京
- Web予約
その他 -
- 受付時間 9:00 ~ 20:00
- 土日祝日:10:00~18:00
- 電話予約により時間外対応可能
-
民法解説27 時効の完成 時効が完成しても援用しないと意味がありません
民法総則 (No.27)
時効 ⑤
4.時効の完成
( 1 ) 時効の援用
(時効の援用)
第百四十五条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
民法の23回目でやっています。忘れてしまっている人は見なおして下さい
- 援用:時効の利益を受ける旨の意思表示
※一定の事実状態が一定期間経過したのみでは、
時効の効果は発生しません。
必ず当事者の「援用」が必要です。
- 援用権者
当事者及び正当な利益を有する者・その承継人
( 2 ) 時効利益の放棄
(時効の利益の放棄)
第百四十六条 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
※関連項目:相続放棄と同じ
原則:時効放棄の意思表示が必要
例外:時効放棄の意思表示が不要(援用権の喪失)
放棄の意思表示がなくても、時効完成後に弁済するなどの法律行為があった場合。援用権を喪失し時効援用ができなくなる。
※時効完成の事実を知らなくても喪失する(債権者の保護)
( 3 ) 時効完成の効力
(時効の効力)
第百四十四条 時効の効力は、その起算日にさかのぼる。
- 取得時効:「はじめから権利者であった」
※原始取得:後の取得者や抵当権者に対抗できる
- 消滅時効:「起算日に権利は消滅した」
※利息も発生しなかった事になる
※起算日:権利を行使できる時
民法の26回目でやっています。忘れてしまっている人は見なおして下さい
(4) 第三者との関係
- 時効完成前の第三者
原始取得の為当然に対抗できる
※当事者の関係になる
- 時効完成後の第三者
2重譲渡と同じように考える
※不動産においては登記が対抗要件
また物件変動で細かく解説します。
2023.03.18
-
民法解説26 消滅時効 時効は何年で成立するの?何が手に入るの?
民法総則 (No.26)
時効 ④
3.消滅時効
( 1 ) 債権等の消滅時効
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
時効によって消滅する権利は、債権(金銭消費貸借・賃料債権
など)及び所有権以外の財産権(地上権など)です。
※所有権は、時効によって消滅することはありません。
- 権利を行使することができる時(起算点)
確定期限・不確定期限
→その期限の到来時
※期限の定めのない場合
債権成立の時
b.) 一定期間
確定判決により確定した債権 10年
※その他、法律の定めによる例外がある
・遺留分減殺請求権
・不法行為による損害賠償請求権
・税金債権
2023.03.11